こんにちは、dokuiro/Hiroyuki Tanseiです。今回はFaBのチーム活動に関する記事になります。
競技的なTCG/DCGには、チームに所属して活動するプレイヤーがいます。
Jacob Clements、Brodie Spurlock、Yuki Lee Bender、Majin Baeといった世界的トップクラスの選手たちも、チームに所属して活動しています。公式配信でも、大会中に「Team Spotlight」として強豪チームの選手の戦績が紹介されるほど、「チーム」の文化はFaBに根付いています。


Mtgやシャドウバース、ハースストーンといったTCG/DCGでもチーム活動は非常に盛んですが、FaBは特にチームでの活動が役に立つTCGだと考えています。
私個人も、日本選手権優勝や、コーリング:神戸top4入賞時などの戦績を残せた大会の背景には、「おかゆパイレーツ」や「アウ部」などのチームでの活動がありました。現在は「Team goagain」と「Allies」というチームに所属して、意見交換や練習などの活動をしながらFaBに取り組んでいます。
3年近くチームやチームっぽい団体での調整に取り組んできた私が、チームのメリットデメリットについて考えるのが今回の記事になります。チーム活動の予定がなくても、友人間やコミュニティで練習や意見交換をされてる方は何かの役に立つかも?
チームで活動するメリットについて
この記事では、固定メンバーで情報交換・調整を行う集団をまとめて「チーム」と呼びます。
チームで活動するメリットはいくつかあります。まず大きくは以下の2点でしょう。
①チームメンバー間の知見のシェアによる情報の多さ
②チームメンバー間で練習することによる(質の良い)練習相手の確保
特にFaBのゲーム性を考えると、①、②の重要性は高いです。
FaBって、一人で検証するコストがめちゃくちゃ高いゲームなんですよね。
まずはヒーローの多さ。競技的なTCGではマッチングするデッキが10種程度であることが多いですが、FaBはヒーローの数だけデッキがあり、雑多な環境では15-20種程度とのマッチングに備えなければいけません。

それに加えて、リストが変わるたびにサイドインアウトが細かく変わります。
チームで複数人で同じヒーローを使用して、研究を行うことで、ヒーローの長所・短所や、ゲームプランの研究やリストの改善を効率良く進めることができます。
このマッチアップは先手が良いのか後手が良いのか、このサイドカードは有効なのか…一人で研究し尽くすには膨大が労力がかかってしまいますが、チームで行えば効率が良くなります。
また、対戦相手の確保という面もチームのメリットです。例えば野良対戦、Talishar等のツールで当たった対戦相手のプレイやゲームプランがよくなかったり、一般的でないリストを使っていた場合、「本来は不利なマッチなのに勝ててしまった」という事が起こり得ます。
「ファティーグ対策が不十分なリストだが、対戦相手の防御にミスがあって勝ててしまった」ようなパターンですね。こうなると本番で「正しいゲームプランの練習ができていなかった」「有利だと思っていたが、こう来られたら厳しい。対策が甘かった」といった事態になり得ます。
しかし、練習相手が信頼できる、十分な経験値のあるプレイヤーならそういった「負の成功体験」による誤認を防ぎやすいです。
要約すると「数による効率上昇」「練習の質の担保」「意見交換」等がチームのメリットと言えます。
チーム活動の難しさ
さて、チーム活動はこんな利点がありますよ!という話をしましたが、いくつかのFaBのチームを渡り歩いて来て、実際にはそこまでうまく行くことは稀であることを痛感しています。
これもFaB固有のゲーム性が問題点になることが多いです。
・練度による壁
例えばチームによる研究で、来週のコーリングは《Vynnset》が良さそうだ!という結論が出たとします。

ではそのプレイヤーが全ての知見をシェアしても他の9人が、1週間で《Vynnset》を充分に使いこなして来週の大会で優勝できるようになるでしょうか?というと私はNoだと考えています。
これはヒーローの難易度や各プレイヤーのこれまでのヒーロー経験値などが絡むので、一概には言い切れませんが、10人いて10人とも1週間で別ヒーローに乗り換えれるチームは稀でしょう。
これにより、「正解のデッキがわかっても、それをシェアできるわけではない」という問題が発生しやすいです。
練度という壁ですね。「このデッキが強い」「立ち位置が良い」という情報は共有できますが、「そのデッキを上手く使う能力」まで一瞬で共有することはできません。
また、別の問題として、ヒーロー性ゲーム故に、プレイヤーとの相性が顕著に現れます。アグロのライフレースが得意なプレイヤーと、長期戦のピッチスタッキングの攻防が得意なプレイヤー、防御が上手なプレイヤーの強みは異なります。アグロが得意なプレイヤーが環境的に良いから!という理由で《人狩りのアラクニ》などを使っても、長所を失って凡百なプレイヤーになってしまうだけの可能性があります。
FaBは、手札4枚の使い方が常に問われるゲーム性というのもあり、それが顕著に現れやすいです。
・使うヒーローが分散することで知見が増幅されない問題
これも同じくヒーロー性かつ、プレイフィールが色濃くでるゲーム故の問題です。10人全員が別々のヒーローを使うチームでは、各ヒーローのスペシャリストがいるというメリットがあります。
一方で、各ヒーローを深く研究する人間が1人しかいないため、デッキリストや細かなプレイのブラッシュアップは、そのプレイヤーの経験と発想に依存してしまいます。「自分では思いつかなかったカードを、別のメンバーが発見する」といった、チーム活動ならではのシナジーが起こりにくくなるわけです。
これらの問題に加えて、TCGチームの課題としてあげられがちなギバー/テイカー問題やアウトプット/インプットなどの問題が発生します。「毎回他のメンバーからリストや調整結果をもらうだけで、自分はほとんど意見を出さない」「練習には参加するが、練習結果を言語化して共有しない」「自分が使うヒーローについては情報を求めるが、他のヒーローについては協力しない」などの問題ですね。20人のチームがいたとして、20人全員が脳をつなげたように情報を共有・活用できるわけではありませんからね。
じゃあどういうチームが良いのか?
世界レベルのチームのヒーロー選択を見ていると、アグロデッキが得意な人はこの環境は〇〇、コントロールデッキが得意な人はこの環境は〇〇!というようにチーム内でアーキタイプ毎にデッキシェアしているパターンが多く見られます。例えば、2025年に開催された「世界選手権:フィラデルフィア」では当時アグロの《シンドラ》、秘術ミッドレンジの《ヴァーダンス》、盟友ミッドレンジの《グレイビィ》の3ヒーローが中心の環境でした。

そして、Majin Bae選手やYuki Lee Bender選手などが所属する「Team INVASION」のヒーロー選択は《シンドラ》8名、《ヴァーダンス》4名、《グレイビィ》2名となっています。《ヤール》を選んだMichael選手以外は上述のTop3のヒーローの内プレイフィールが合うヒーローを選択している可能性が高いと考えられます。

同様に、Michael Feng選手、Jacob Celements選手、Brodie Spurlock選手を擁するチーム「Super Armory」も多くは《シンドラ》と《グレイビィ》を選択する形になっています。こちらのチームは《ヴァーダンス》は良くないという結論を出していそうですね。

2026年4月に開催された「プロツアー:横浜」環境では《傀儡・アラクニ》、《ヴィクター》、《オシリオ》がTop3の環境でしたが、同様の事象が発生しています。



「強いヒーローから選んでるだけだから当たり前のことでは?」と思われるかもしれませんが、大会会場にいるFaBプレイヤーをランダムに10人選んで大会の使用デッキを聞いた場合はこうはなりません。「プロツアー:横浜」の例ですと、上位Top3ヒーローの合計数は全体の46%ほど。つまり、ランダムに10人集めた場合は半分は上位Top3以外のヒーローになるはずですが、チームはそうなっていません。
これらのチームはヒーロー選択の時点で「各アーキタイプの最高峰の強度を持つデッキ」を判別して練習し、大会に持ち込めていることが分かります。
「大会に向けて強度の高いヒーローを2-3人ピックアップして、チームとして研究を行う」という手法は有効なアプローチと言えそうです。
チームのタイプについて整理と分析
ここでチームのタイプによってのメリットやデメリットを整理します。
①『環境最適化型』
上述のチーム「Team INVASION」「Super Armory」などの競技チームが当てはまります。
【メリット】
・環境が正確に読めた場合最適なヒーローが選択できる
・強いヒーローの研究を集中して進めることができる
【デメリット】
・選択するヒーローや環境を読み違えた際に失敗する
・選択したヒーローがメタられる可能性が高い
②『ヒーロー特化型』
特定のヒーローを使うプレイヤーが集まるコミュニティのタイプです。私はかつて《アウローラ》を使うプレイヤーが集まったグループである「アウ部」というチームを中心に調整し、そこで出来上がったリストを使用して「コーリング:神戸」で4位に入賞できました。
【メリット】
・同じヒーローを使う人々の知見が集まるので知見の分散が発生しない
【デメリット】
・他ヒーローに対して十分な知見が無い場合、相手ヒーローの対策が分からないなどの状況になる可能性がある
・今一番やり込んでいるヒーローは同じなのでミラーの練習以外がしづらい
・環境的にそのヒーローやデッキタイプが向かい風の場合に打開策がないことがある
③『コミュニティ型』
店舗や地域など、チームという形ではなく活動/練習するコミュニティです。
【メリット】
・ヒーローを限定せず、広く情報交換できる
・大人数になりやすい
・ゆるく所属/参加しやすい
【デメリット】
・情報の集約がしづらい
・その場にいる人に依存する為、望んでいるマッチの練習ができるわけではない

例えば自分が「戦士」クラスしか使いたくない!という場合は、「環境最適化」型のチームにはそぐわないでしょう。また、チームに所属しなくても結果を出しているプレイヤーは多数おり、そういった方は練習会や大会で技術を磨き、結果に結びつけています。チームでの活動は結果を出すのに必ず必要なわけではありません。
チームデッキの面白い事例
オマケのコーナーです。チームの成果として面白い例があるので、紹介します。時は昔、2024年の「暴力の饗宴/Heavy Hitters」環境末期に開催された「プロツアー: ロサンゼルス」。当時は《ケイヨ》と《Dromai》がツートップを張っていた環境でした。どちらのヒーローが優勝するか…と予想されていた環境に3番手に表れたのがそれまでメタゲーム上で活躍していなかった《ドリンシア》。

この《ドリンシア》の多数は《Hatchet of Body》と《Hatchet of Mind》を装備した、チーム「Runaways」が持ち込んだチームデッキ、通称「ハチェット《ドリンシア》」でした。







《勇敢な先駆者》の防御力と平均的な表現価値の高さで《ケイヨ》に強く、《Cleave》の「盟友」メタカードで《Dromai》にも対抗できる。とメタに風穴を開けて、決勝戦まで上り詰めたチームデッキ、それがハチェット《ドリンシア》です。この大会まで秘匿され、誰もが《ドリンシア》がなんでこんなに使用者が多いんだ?と驚き、Top8に2人いる《ドリンシア》を称賛し、決勝戦での《Dromai》との戦いに興奮しました。

ただ、長いFaBの歴史でもこのようにメタ外のヒーローがチームデッキとして持ち込まれて活躍した例は、私が知る限りはハチェット《ドリンシア》のみ。非常にレアなケースになっています。
個人的な考え
個人的な考えとして、私がこれまで所属してきたチームで、上手く行ったチームには以下の共通項がありました。
・同じ大会に出るプレイヤーが集まっている
・大会で使用するヒーローが共通しているプレイヤーが、デッキリスト、マッチアップ、先手後手、プレイなどについて密に意見交換している
この2点があれば、モチベーションや利害が一致しやすく、お互いWin-Winとなる関係を築きやすいです。これらはチームだけではなく、個人間の交流やショップなどのコミュニティでも同じことは言えるでしょう。ご参考になれば幸いです。
以上です!お読み頂きありがとうございます。
Hiroyuki Tansei/どくいろ @fab_dokuiro
お気に入りヒーロー:《Lexi》,《Fai》,《Kayo》
お気に入りカード:《Art of War》
ホームショップ:TableGameCafe’Shuffle、TCG Shop Go Again
史上初の日本選手権で優勝。CallingTokyoTop8。CallingKobeTop4。日本屈指の強豪プレイヤー。手数、打点を読む洞察力が強み。アグロデッキが得意。

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