目次
概要
このシリーズは大会で結果を出したリストを取り上げて、各カードの採用理由や、ヒーローの勝因を推理・考察するシリーズです!このシリーズを読んでいるだけで、「基礎的なカードの使い方」から「環境に合わせて採用すべきカード」や「ヒーローの選び方」が培われていくはず!という企画になります。
今回は「闘魂激突」シーズン 2025年9月-2026年1月のリストになります。
本文
GoAgainMedia攻略記事担当のdokuiroことTansei Hiroyukiです。
今回取り上げるデッキは2025年11月14日~16日にかけて開催された「世界選手権:フィラデルフィア」のトップ8!
世界選手権はFaBの競技シーンで最高峰の大会で、年に1回、その年の最高峰のプレイヤーを決める大会です。今回はCCとLL2種のフォーマット混合、SEはCC&LLを用いてのBO3という初の形式での大会となりました。
そんな最高峰の大会で、栄えあるチャンピオンとなったのはCC《シンドラ》、LL《ダッシュ I/O》を用いたMichael Jaszczur選手!優勝おめでとうございます。



当記事ではCCフォーマットのデッキに絞って分析して行きます。また、サイドカードを筆者の判断で分けていますが、こちらはあくまで推測です。
1位 《報復のドラカイ、シンドラ》


直近のプロクエストでも最多勝利数を挙げ、世界選手権でも使用者最多ヒーローとなった環境筆頭アグロの《シンドラ》が前評判通り優勝!


《シンドラ》の基本的な動きや強みについては以下の記事で解説しています。
ではリストの分析に進みます。


日本の《シンドラ》にはあまり採用されない《背後からの痛撃》と《Take the Tempo》が特徴的。《背後からの痛撃》は0コスト3点続行ですが、ヒットすると実質+1点され0コス4点相当と高パフォーマンスになるので、防御性能が低い《シンドラ》ミラーなどアグロ対面で活躍します。《シンドラ》と対戦する相手は《機運の仮面》のトリガーとなる3-4発目の攻撃を防ぎたい状況が多いので、1発目に使用する《背後からの痛撃》は防ぎたいけど防ぎづらい…というジレンマを与えることができます。
竜系ではないので事故要素や《シンドラ》能力の起動に貢献しない点、防御されてしまうとただの0コス3点相当なのがネックで、《フローリアン》等の手札3-4枚を防御に使用する防御的なデッキには評価が落ちる1枚です。環境を見て採用を決めたいカード。
《Take the Tempo》は追加の《スナッチ》のようなカードです。ヒットした時、戦闘チェインで3回以上ヒットしていれば自分のデッキトップを追放。その後、追放したカードが攻撃アクションなら次の自分ターン終了時までプレイ可能になります。攻撃アクションが多数を占める《シンドラ》においては高確率で攻撃アクションを追放し、次のターンにプレイできるでしょう。
連続したヒットを要求する《機運の仮面》と異なり、戦闘チェインで3回以上ヒットしていれば良いので、直前の攻撃が防がれてヒットしていなくてもヒット時効果を狙えます。更に、《短刀の妙技》を起動した短剣のヒットもカウントするため、下画像のような防御が行われても《Take the Tempo》の能力は誘発します。(1発目の攻撃アクションヒット、《短刀の妙技》ヒット、《Take the Tempo》ヒットで3発ヒットしたカウント)

このテクニックを応用すれば、手札2枚からでも《Take the Tempo》の誘発が狙えるため、ミラーマッチなどにおいて少ない手札から相手に防御を要求することができます。ヒットしているチェインリンクではなく、戦闘チェインでヒットした回数を参照しているため、1回目の攻撃がヒット&《短刀の妙技》がヒットで2回カウントできるんですね。そのまま《Take the Tempo》がヒットすれば条件達成です。

また、《シンドラ》よく採用されている《献身の証明》および《竜の牙:炎》が不採用となっています。



これは推測の域を出ませんが、1コストかつ防御値2である《献身の証明》が事故要素となることを嫌い、不採用としたい→《忠義》に依存している《竜の技:炎》も不採用にする必要があり、代わりとなる1コスト5点の採用を検討→《Take the Tempo》を採用しよう、といった調整の背景を感じます。



サイドカードはパワー7のポッパーを4枚採用。《Prism》へのガードをしっかり上げています。
《胸ハリ》は「闘魂激突」で登場した新たなポッパーです。7点ポッパーの中では唯一の2コストなので赤赤の2枚ピッチでもプレイ可能な点が利点。



防御リアクションは《嵐からの避難》3枚と《死後も貫く忠誠》3枚を採用。《死後も貫く忠誠》は攻撃リアクションを使用してきて、手札破壊も兼ね備える《傀儡・アラクニ》やロングゲームを狙ってくる《カッサイ》相手への活躍が見込まれます。
サイド枠をこれらに割いた結果、《グレイビィ》や《ダッシュ I/O》へのメタカードとして採用される《戦争屋の外交術》などは不採用となっていますが、しっかり《グレイビィ》を下しての優勝となりました。元々有利が付いている《グレイビィ》に過剰なメタカードは不要と判断し、《シンドラ》を狙った暗殺者や《Prism》へのガードをしっかり上げているリスト、という印象を受けます。
2位・5位 《難波船の略奪者、グレイビィ・ボーンズ》

2位 Matthew Dilks選手

5位 Jimmy Niro Demers選手

2位と5位は《グレイビィ》。9月の赤黄《黄金の一杯》の制限以降、勢力を落としていますが、いまだ環境上位の3大ヒーローの一角として環境に影響を与え続けています。《黄金の一杯》規制後の構築の変化は以下の記事で触れています。
筆頭アグロの《シンドラ》には不利がついてしまいますが、《ヴァーダンス》や《ケイヨ》などそれ以外の多くの対面には有利が付くのが魅力。特に、トッププレイヤーが駆る《グレイビィ》は不利対面である《シンドラ》を倒すことで好戦績を収めています。




特筆すべき点としては両者とも《支配の王冠》を採用していない点。《金貨》を安定して出すことよりも頭装備の防御値2を優先しています。更に、2位のMatthew Dilks選手は《トロパル=ダニの財宝》も不採用。《黄金の一杯》禁止以降は《トロパル=ダニの財宝》がかなり採用されていたので意外でした。代わりに《闇金鮫》を2枚採用しています。



《金貨》生成+ファティーグ対策になる《スクーバ》は3枚採用が定番に。2位Matthew Dilks選手のリストは《ウェイラー・ハンパーディンク》を2枚。5位Jimmy Niro Demers選手は《ウェイラー》は1枚、《追憶》を1枚採用。どちらのリストも《グレイビィ》への対策の一つであるファティーグをしっかり意識していることが分かります。
3位・5位・5位 《薔薇の棘、ヴァーダンス》

3位 Jakob Allan選手

5位 Maximilian Klein選手

5位 Majin Bae選手

top8に3名と最多のヒーローになったのは《ヴァーダンス》。最新拡張「闘魂激突」で《灯し葉》を獲得したことで大きく強化され、プロクエストシーズンも《シンドラ》に次ぐ勝利数を稼いでおり、名実ともに環境の2番手に位置しています。細かい部分の差異はありますが、共通して言える点はどのリストも《蔓延+生命》と《治癒のポーション》のコンボを採用している点。



これらのコンボは《シンドラ》などのアグロ相手にはサイドアウトされますが、《ヴァーダンス》ミラーマッチで主に活躍しているようです。他、ファティーグを狙ってくるような守護者などにも採用していると楽に勝つことができます。


その他の3名とも共通して採用しているサイドカードも印象的です。腕装備《石壁の籠手》は《シンドラ》対策が主な目的の装備です。《燃え滾る報復》の後の短剣の攻撃に差し出せれば概ね3点以上得できます。


《傷には傷を》は《グレイビィ》の「盟友」を処理できる続行札としてサイドカードの定番となっています。やはり環境の上位ヒーローである《シンドラ》《グレイビィ》そしてミラーマッチへの対策は全員しっかりと採用していますね。
3位 《Prism,Awakener of Sol》


幻術士クラスの《Prism》がtop4に1名入賞。
《Prism》はその特性上、《Herald》や《Figment》などのカードを採用する必要があるため、デッキの45-50枚ほどがほぼ固定スロットです。



が、残りの枠に環境に応じて採用されるカードの枠があります。今回のリストですと《それで終わりか?》や《Soul Shield》、《現実の崩壊》などが該当します。



《それで終わりか?》は《グレイビィ》の《黄金の一杯》や青《海生のうねり》、《シンドラ》の《炎斬》や《血脈の深化》といった攻撃アクションに誘発が狙えます。攻撃値2以下のカードが入っていないアグロ相手にも、最低限、防御値のないオーラと入れ替えることができます。《熟慮》トークンの効果などで引いても格納庫に置けるのは防御リアクションのメリットですね。格納庫に置いておけば《蒼海の大覇船》をケアできる点も利点です。



《Soul Shield》は《ケイヨ》や《グレイビィ》など6点の攻撃が多い相手に活躍が見込めます。《グレイビィ》相手には格納庫に置いておくことで《蒼海の大覇船》の格納庫破壊をケアできますし、《黄金のフック》の効果が乗った「盟友」の6点攻撃を防ぎながらソウルを貯めることもできます。



《Celestial Cataclysm》と《征服の命令》はミラーマッチのポッパーとしての役割を果たし、《Celestial Cataclysm》は防御的なヒーロー相手にソウルを貯めてから、ポップされない7点続行でリーサル手段として活躍します。《征服の命令》はアグロ相手への活躍が見込めます。特に「圧倒」を持つ《Herald of Erudition》をケアして格納庫に防御リアクションを置いてる相手に打てると理想的。
5位《武装した獣性、ケイヨ》


「闘魂激突」で強化された野人ヒーロー《ケイヨ》がtop8に入賞。
従来のリストと比較して、非常に《活力/Vigor》トークンに寄せたリストであることが印象的。《活力》を出せるカードが《甲高い遠吠え》、《強健な衝突》、《力強い衝撃》と3種、合計10枚採用されています。






《活力》が1個出ていれば、青1枚をピッチして、2コストの続行攻撃アクション→武器3点or2コスト攻撃アクションといった手札2-3枚で強力な動きが可能です。また、胴装備《野獣の蛮帯》を起動しているターンには《活力》=2コストのAAをプレイするのに必要なリソースとなるため、非常に大きなバリューを生みます。






3コストと重い代わりに非常に安定して続行が付く《制御不能》を3色9枚採用。安定して手札4枚を攻撃に使えるように構築されています。赤青はよく採用されますが、黄色はリストによって採用の有無が分かれている印象。



また、よく採用されてきたカードである《押し潰し》(Pulping)を不採用としています。《制御不能》9枚と《荒ぶる騎乗》6枚で続行攻撃アクションは十分採用しているのと、防御リアクションや、《ケイヨ》対策として採用されることもある《大混雑》で格納庫から防御することでも対策されるようになった点がネックとなったのでしょうか。



《不敵な対立》は青の攻撃値5点なので《ケイヨ》と相性が良く、《シンドラ》の《祖先からの権威》に合わせることができます。《不敵な対立》を-1点として使用するのは表現価値の面で弱い動きですが、《シンドラ》は《機運の仮面》の誘発1ドローが狙えるタイミングで《祖先からの権威》をプレイしてくることが多いため、1枚捨てて1ドローを防ぐことができていれば1:1の交換と捉えることもできます。防御リアクションを採用しづらい《ケイヨ》は《祖先からの権威》でシャクられやすいため、青の防御値3として機能しながら疑似的な防御リアクションとして機能する《不敵な対立》の採用は納得です。
この環境は「圧倒」を主軸にした戦略はあまりないので、そちらの対策としての採用ではないと思われます。



《予期せぬ裏拳》の採用も面白いです。「激突」を行うカードは《強健な衝突》を6枚、《無謀な大暴走》を3枚採用している為、そこそこ「急に1点ダメージを食らう」ということが起こりそう。急なリーサルも狙えます。「闘魂激突」の「激突」は公開した自分のカードを下に送ることができるため、複数回誘発した際は積極的にカードを下に送って《予期せぬ裏拳》を探しに行く…みたいなプレイも可能です。
今回のデッキ分析録は以上となります!
2025年の総決算とも言える世界選手権も終了し、年内の競技シーンは落ち着き始めました。
来年もRtNやコーリング:秋葉原と年始から競技イベントは盛りだくさんなので、今のうちにリスト分析や、配信アーカイブ視聴などの座学をするのもオススメです。
以上です、お読みいただきありがとうございました。
Hiroyuki Tansei/どくいろ @fab_dokuiro
お気に入りヒーロー:《Lexi》,《Fai》,《Kayo》
お気に入りカード:《Art of War》
ホームショップ:TableGameCafe’Shuffle、TCG Shop Go Again
史上初の日本選手権で優勝。CallingTokyoTop8。CallingKobeTop4。日本屈指の強豪プレイヤー。手数、打点を読む洞察力が強み。アグロデッキが得意。

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