こんにちは、dokuiroことTansei Hiroyukiです。9/26-28に開催された競技イベント、コーリング:静岡に参加してきたので、今回はそのレポートになります!
結果から書きますと、《オシリオ》を使用して9-3、惜しくも10位でtop8に残れませんでした。

同じく《オシリオ》を使用していた前回の「コーリング:シンガポール」と同じく、後1勝が遠い!
今回のレポートでは大会当日に至るまで、調整過程をメインに振り返りたいと思います。
ヒーロー選びについて
大会前はまず恒例のヒーロー選びから始まりますが…今回の「コーリング:静岡」はなんと「闘魂激突」発売1週間後の大会、つまり環境初期です。新ヒーローは環境に影響を与えるか、新カードはどうかといった吟味も必要で、しかも、9/1に禁止改定があったため、その影響も甚大。
新ヒーローを触ってみたり、新カードが入ったヒーローと対戦したり……をした末に、「コーリング:静岡」1週間前の段階での環境予想はこんな感じとなりました。(詳細記事はこちら)

結果、新ヒーローはあまり活躍しなさそうで、新カードによる影響は《ケイヨ》の強化のみ大きいが、それ以外はそこまで大きくはなさそう…となり、9/1の禁止改定の影響が大きい環境であると予想しました。具体的には、《苦悶の束縛》規制により苦手としていた「暗殺者」が減り、追い風の吹いている《シンドラ》と、《発芽》が解禁された《フローリアン》の活躍が見込まれます。




この環境の難しい点は環境のtopにいると想定したヒーロー、《シンドラ》、《フローリアン》、それに加えて《グレイビィ》がそれぞれ全く違う方向性を持つヒーローであることです。



《シンドラ》に勝つにはアグロ耐性か、並び立つ速度が必要で、《フローリアン》に勝つには防御力を突破する《短刀の妙技》や「盟友」や秘術ダメージといった要素やビッグターンを成立させるコンボが必要で、《グレイビィ》に勝つには「盟友」を処理する能力やゲームを早く終わらせる速度が必要。どれかを対策すればどれかのガードが下がる…安定して勝つのが難しい環境です。
・候補として練習したヒーローたち
《グレイビィ》



前環境の王者にして、「プロツアー:シンガポール」の優勝デッキです。赤黄《黄金の一杯》が規制されて、《金貨》不足に苦しむ展開の発生率は上がりましたが、「盟友」の強さは健在。練習していると、大地系ヒーローには強いし、ちゃんと回った時は強力なデッキであることを実感するが、私が練習したり周囲の《グレイビィ》プレイヤーを見ていると全然《シンドラ》に勝てないので断念。非常に選択肢が多くてプレイ難度の高いデッキなので、大会においては長丁場での疲労やミラーマッチの時間切れなども懸念要素。
《シンドラ》



苦手だった暗殺者クラスが改定により《苦悶の束縛》を失ったことで大幅弱体化。残った苦手なヒーローである《ヴィクター》などの守護者は魔術師クラスや《グレイビィ》が苦手なのであまり数は増えづらいと予想されるため、メタ的にはめちゃくちゃ良いヒーローです。が、ビッグターンがあまりないアグロデッキであり個人的に趣味に合わない点、数が多いことが予想されるのでメタられるであろう点、《ヴィクター》など特定のヒーローに当たると厳しい点、ミラーマッチに自信がない点などの理由で断念。正直「合理的」な判断では《シンドラ》が最も良いアグロデッキと理解はしていましたが、「感情的」な部分で《シンドラ》が合わなかったというのが大きいです。(競技プレイヤー失格!)
《オシリオ》



《オシリオ》は7月の「プロツアー:シンガポール」及び「コーリング:シンガポール」で使用したヒーローなので経験値は十分あるアグロ・コンボヒーローです。《シンドラ》同様、《苦悶の束縛》を苦手としていたので、規制自体は追い風のヒーロー。苦手なのは《シンドラ》《ダッシュI/O》などの高速アグロで、得意なのは《フローリアン》《ヴァーダンス》《グレイビィ》など中速以下のデッキであり、環境の半数以上には有利な予想になるので、立ち位置は悪くありません。ただ、《オシリオ》は直近のバトルハーデンなどで好成績を収めており、《オシリオ》のコンボを大きく阻害するメタカード《残響のアミュレット》を入れているリストが海外を中心に増えている点は懸念点。強化された《ケイヨ》とも練習しましたが、《シンドラ》より打点が緩やかで1ターンほど猶予があるのでそこまで厳しいとは感じませんでした。
《グレイビィ》を断念した後、《シンドラ》か《オシリオ》で悩んでいましたが、9/23に開催された大会、FaBnextにて《オシリオ》を使用して6-0できたことで自信がついて《オシリオ》に決定。何より《オシリオ》はプレイしていて楽しい、肌に合うと感じるのも決め手になりました。
つまり、ヒーローが確定したのは「コーリング:静岡」4日前のことでした。時間がない!
《オシリオ》の調整過程
使用するヒーローを《オシリオ》に決定する前から、「プロツアー:シンガポール」及び「コーリング:シンガポール」でリストを共有してくれた名古屋の強豪選手「BigBlanka」ことMizutani Yoshiki選手(https://x.com/VickeBlankaHS)から定期的に《オシリオ》のリストに関するアイデアは送られてきており、ちょいちょい交流していました。自分も本腰を入れて《オシリオ》を使うことにしたので、9月22-3日くらいからBlanka君との議論を活発にしていきました。LGFを4枚獲得している強豪であり、頼れる調整パートナーです。……が、意見交換をしているとどうも、すれ違いが多いです。
強いと認識しているカードが違っていたり…





彼の提案する《フローリアン》相手へのピッチスタッキングを試したら0-5したり…

音楽性の違いから、色々とすれ違いがありました。
また、マッチアップについて、自分は《ヴァーダンス》によく勝っていますが、Blanka君は苦手意識があるようです。逆に自分が苦手意識のある《シンドラ》には彼のほうが勝率が高そうです。
そういった議論(言葉の殴り合い)をしていると、徐々にすれ違う理由が明確になってきます。70枚くらいは同じリストを使っていましたが、プレイのプランがまるで違っていたのです。列挙すると以下のようになりました。
【自分のプラン】
対アグロ:《ターバン》や防御でライフを守りつつ、インスタントを捨てて引いてコンボにたどり着く(なかなか安定しない)
対大地:コンボターンで10数点削って、足を使わないコンボターン以外でもamp4以上を目指して小爆発を作って削る

【Blanka君のプラン】
対アグロ:守りを捨ててコンボ速度に寄せ切って2ターン目にコンボを決め速度勝ちを目指す
対大地: ピッチスタッキングで1ターンキルをする(なお、《フローリアン》に0-5)
要は、
・自分は安定して毎ターンある程度動けるプレイと構築をしており、毎ターンある程度ダメージを通して、コンボはそこまで大きくせずに削りきるプレイをしている
・Blanka君はターン毎の表現価値よりも、セットアップして、コンボターンのダメージを重視したプレイをしている
ということです。
また、それらのスタイルに寄せたプレイ/構築をしている結果、彼はコンボだけでは削り切れない《ヴァーダンス》や《フローリアン》に苦手意識があり、自分は数ターン以内にコンボを決めないと負ける《シンドラ》や《ダッシュI/O》に苦手意識があった、ということが分かってきました。対話(言葉の殴り合い)は大切!
お互いのプレイスタイルによる有利な対面が分かったので、ハイブリッドさせれば究極完全生命体《オシリオ》が生まれることになります。
・コンボターンを作るのに貢献するセットアップカード
・毎ターンある程度ダメージを出したいテンポプレイで強力なカード
の2種に分け、サイドインアウトを整理し、80枚に収めました。

結果、なかなか革新的なリストが完成しました。リストはこちら。

とはいっても、どの点が変なリストかなんて《オシリオ》を使っていないと知らなくて当然だと思うので、シンガポールの時に使用したリストと比較して整理します。リンクはこちら
大きく変わった点は以下。
・《エーテルの糸紡ぎ》3枚採用
・《誘惑と窃取》3枚採用
・《高圧電流》3枚採用



・《癒しの印》3枚から1枚に減少
・《引っかけ》不採用
・《破滅のエーテル破》不採用



それぞれカードの役割と採用理由を解説します。
《エーテルの糸紡ぎ》の役割



アグロ用、秘術防壁が低い相手用のカード。先手や後手の1ターン目にプレイし、選択により《光速移動》や《光輝の印》といったキーカードにアクセスする確率を上げるカードとして採用。4枚下に送っていれば実質1ターン分コンボパーツを引き込むターンが早まっているので、追加ターンを得るカードです(過言)。また、コンボターンに《エーテルの糸紡ぎ》を増幅して、選択11などができれば、《ショック》と稲妻インスタントを上4枚に固め、相手ターンに4-5点の秘術ダメージを飛ばしてリーサルすることも可能。秘術防壁が高い相手に3点軽減されてしまうと、手札2枚から1点ダメージの選択1、みたいなことになって悲しいので、サイドアウトします。
《誘惑と窃取》の役割



コンボ用の革命的な1枚。これまで《オシリオ》にはあまり採用されていなかったカードです。
《誘惑と窃取》の役割は3つ。
1.格納庫に置いて、次のターンに《光速移動》と組み合わせてコンボを狙う
2.《征服の命令》のような格納庫破壊を回避しながら手札の枚数を確保する
3.1ドローにより、コンボパーツを見つけに行く
4.相手の手札を見ることで、攻撃リアクションを確認したり、防御の裏目をなくす
1.と3.により、コンボの速度を要求される《シンドラ》、《ダッシュI/O》などのアグロに活躍するカードです。コンボターンに《光速移動》と組み合わせればドローしながら《光速移動》を回収できます。この1ドローによりコンボが大きく伸びたり、秘術ダメージにアクセスできたりするのでとても大きな1ドローです。また、2.と4.の役割から格納庫破壊と攻撃リアクションを多用する「暗殺者」にも活躍します。が、複数枚手札に来た時や、テンポよくプレイしたい時には邪魔なことが多いので、コンボをした後にもゲームが続くことが多い大地ヒーローなどには減らします。
《エーテルの印》の役割



《エーテルの印》はカード1枚使って1点、増幅を活かせても2点と控えめな「印」ですが《稲妻峡谷の導き》+《卓越の閃光》で相手ターンにドローできたり、腕装備《第三紀のエーテルの結束》と組み合わせることで増幅が複数回できたりといった点が強みです。



表現価値を後のターンにズラすことで、コンボターンの出力を上げたり、《精神の歪曲》、《秘奥の刻印》の逆巻を達成しやすくなったり、秘術防壁が低い相手に有用です。
《高圧電流》、《燃やし尽くし》の役割



《高圧電流》、《燃やし尽くし》は《エーテルの糸紡ぎ》や《エーテルの印》が通りづらい、秘術防壁を3以上装備してくるような「大地」ヒーロー相手に大きな秘術ダメージを通す為に入れ替えます。
《稲妻の圧壊》の役割



《稲妻の圧壊》はテンポプレイ用の攻撃的な稲妻・インスタントとしてサイドインします。《忘却への爆破》にプレイすることで、《導電の印》を回収して、《稲妻の化身》トークンを残せば次のターン以降の動きが良くなります。《光速移動》とは相性が悪いので、コンボターンにはあまり強くありません。よってコンボプランの際はサイドアウトします。
《癒しの印》の減少



《癒しの印》は《オシリオ》と非常に相性の良いカードです。私はこれまで3枚採用以外ありえないと考えていました。《光速移動》をプレイして4点ダメージ後に、《癒しの印》をプレイし、格納庫に《光速移動》を置いてエンドすれば、手札消費1枚でお手軽に表現価値7点になりますし、《忘却への爆破》と組み合わせることも可能。コンボターンにも7点相当になり強力ですし、ライフが優勢で3点回復が不要な時は《オシリオ》の能力で捨てることも可能です。数々の試合でこの3点回復によるリーサル回避や、1ターン目の回復に助けられた経験もあり、これまでは《癒しの印》は3枚!と思っていました…が、《シンドラ》にはヒットを防げる防御値3のカードやコンボに繋がるインスタントの方が偉いことが多く、対大地ヒーローには「稲妻」ではないため増幅に貢献しない、《グレイビィ》には「盟友」の処理に貢献しない…つまり環境上位のヒーロー達に《癒しの印》をサイドアウトすることが多い。Blanka君の提言を受けて、うーんと悩みながらも2枚減らす形に。雑多なマッチとサイドインアウトの調整用に1枚残し、結果、上手く行きました。
《引っ掛け》と《破滅のエーテル波》の不採用
《引っ掛け》は《苦悶の束縛》の規制により不要となったので不採用、《破滅のエーテル波》は追加の秘術ダメージカードでしたが、《エーテルの糸紡ぎ》の採用により不要となりました。



このリストの良かったところ
①コンボ速度の上昇・成立時の打点の増大
《エーテルの糸紡ぎ》によりコンボ速度が上昇、《誘惑と窃取》によりコンボ爆発力・成功率が上昇。《忘却の爆破》も9枚採用していることで、コンボ成功率も上昇。《シンドラ》や《ダッシュI/O》相手には2-3ターン目にコンボを成立させる必要がありますが、その再現性が上がり、「コーリング:静岡」本番では2ターン目のコンボに5回くらい成功しました。
②テンポプレイも可能、コンボだけで削り切れない相手もしっかりフォロー
《稲妻の圧壊》、《燃やし尽くし》、《高圧電流》により、コンボターン以外でも一定の打点を出しやすくなっています。また、テンポプレイをする際は《稲妻の化身》トークンが重要。《稲妻の化身》トークンがある状態で《忘却の爆破》で攻撃→インスタントをプレイして《導電の印》を回収。《導電の印》効果で《稲妻の化身》トークンを出して次の攻撃アクションにも続行が付与でき、足装備《稲妻の脛当て》を起動しないターンでも20点近くのダメージを出すことが可能です。

本戦レポート
初戦の《ライナー》にコンボ向けのハンドをなかなか引かず、《ライナー》の威嚇によりコンボするまでの延命も難しく、あっさり負けてしまい0-1スタート。その後、《ファング》《シンドラ》などに高速でコンボを決めてバタバタとなぎ倒して行きますが、《ケイノ》にプレイが悪く負けてしまい5-2で初日が終了しなんとか2日目へ。
二日目は《シンドラ》、《ダッシュ I/O》、《ダッシュ I/O》、《グレイビィ》に勝利して、次勝てばTop8!というところまで行きますが、最後に自分の判断ミスもあって《シンドラ》に負けてしまい、10位での終了となりました。個人的には有利と考えていて当たりたかった《グレイビィ》に1回だけ、《ヴァーダンス》と《フローリアン》には1回も当たらなかったのが悔やまれますが、《シンドラ》4回、《ダッシュI/O》2回と本来不利な相手に6回当たりながらここまで勝てたのはBlanka君からもらったコンボプランのおかげ。Blanka君も6-1で初日突破からの最終8-4と好成績を収めることができたようで、良いリストに仕上げることができたと思っています。反省点としては、時間不足もあり、《ケイノ》や《ヴィクター》など細かいマッチアップの練習ができていなかったこと。次回はヒーローの決定をもう少し早くしたいですね。
コーリング:静岡全体について
海外の強豪、Justin Cu選手を見事打ち破り優勝したTAKUYA KOJIMA選手の優勝がとてもめでたいですね。偉業。日本のプレイヤーのレベルは本当に高いと思いますが、特に今回は関東・中部のプレイヤーの活躍が目立ったように感じており、各地域のコミュニティとプレイヤーが成長しているのを強く感じました。(関西も負けてられんね)
アーティストブース、バイヤーブースも充実しており、参加者も多く、良いイベントだったなぁと思います。個人的には、初日終了後に行ったスーパー銭湯がご飯も美味しく、設備も充実していて神でした。
来年は秋葉原、横浜(プロツアー併催)、新宿、京都と4回も国内でのコーリングが開催予定です。
アーモリーなどでカジュアルに遊ぶFaBもとても楽しいですが、やはりFaBの醍醐味はヒリヒリする競技イベントにあると思っているので、大型競技イベントに参加されたことのない方も来年は是非、参加を検討してみてはいかがでしょうか?参加に権利が必要な日本選手権やプロツアーと異なり、コーリングはチケットを購入さえすれば参加でき、金曜日の晩に新幹線に乗って、日曜日晩に帰ることができるので、社会人にも優しい大型競技イベントです。(自分は実際そのスケジュールで今回動きました)
FaBの熱気が感じられること間違いなしなので、オススメです!
以上です。お読み頂きありがとうございました。
Hiroyuki Tansei/どくいろ @fab_dokuiro
お気に入りヒーロー:《Lexi》,《Fai》,《Kayo》
お気に入りカード:《Art of War》
ホームショップ:TableGameCafe’Shuffle、TCG Shop Go Again
史上初の日本選手権で優勝。CallingTokyoTop8。CallingKobeTop4。日本屈指の強豪プレイヤー。手数、打点を読む洞察力が強み。アグロデッキが得意。

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