FaBテクニック「しゃがみ(攻撃しないこと)」によるメリットと対策法

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はじめに

今回はFaBプレイヤーの中で日常的に使われる「しゃがみ」もしくは「しゃがむ」と呼ばれるプレイについての解説になります。FaBの基礎が分かってきた方向けのステップアップ的な内容になります。

しゃがみって何?

端的に言うとFaBのスラングにおける「しゃがみ」は「守りに回ること」を意味します。手札3枚を防御に使って、重要なカードを格納庫に置いてエンド、なんかは「しゃがみ」の典型的なプレイです。
ですが、その中でも戦略的に・意図的に「しゃがみ」をする時は「このターン攻撃せずに次のターンに表現価値を持ち越すこと」を指します。例えば《ヴィセライ》の《ルーン占い》や《邪悪な詠唱》、《フローリアン》の《発芽》、《ケイヨ》の《骨の鋳造》などが分かりやすい例になります。

これらのカードの共通点は、「闘技場にアイテムやオーラやトークンを残し、次のターン以降に与えるダメージを増やす」ことです。他、「機械技師」のアイテムや「守護者」のオーラ、幻術士の「オーラ」なども類似した性質を持ちます。

スラング的には、単に手札のかみ合いが悪くて、防御に回った方が良い状況で「うーん…このターンはしゃがみかぁ…」といった使い方をすることも多いですが、この辺は定義が緩いです。大きく2種類の意味を持ちますが、今回は前者の意味を中心に取り扱います。

「しゃがみ」のメリット

大きくメリットは2つあります。

①防御に使用したいカードを腐らせることができる

こちらは主に《アイラ》や《カッサイ》、《フローリアン》のようなミッドレンジデッキ相手に役立つことが多いです。《エニグマ》にも「結界」オーラが出ていない状況では有効です。

FaBにおけるミッドレンジデッキは、相手の攻撃を2-3枚の手札で防御することで、残された手札から効率よく反撃することを前提に組まれているデッキです。

例えば《アイラ》の例としてこのような手札があります。

《征服の命令》、青、青、青

武器《調和の小太刀》の攻撃の後、《征服の命令》で7点の攻撃ができ、強力な動きです。それに必要な手札は青1枚と《征服の命令》のみ。余分な青2枚はいらない為、防御に使用するのが理想的です。しかし、ここで対戦相手が「しゃがみ」をしてくる…つまり攻撃してこないパターン、《邪悪な詠唱》を複数枚プレイしてエンドしたり、《発芽》をプレイしたり、《骨の鋳造》をプレイしてエンドすると、《アイラ》側のプレイヤーは手札に余分な青がダブついたままターンを迎えることになります。相手が純粋にライフレースをしてくれた場合、青2枚を防御に使用して6点分の表現価値を出せていたところが、「しゃがみ」によって損する形になってしまうんですね。

当然、防御リアクションやブロックなど「防御にしか使用できないカード」の場合でもこのメリットは発揮されます。上の例の青2枚が《群青へ沈む》2枚だった場合も、やはり相手に「しゃがみ」をされることが表現価値的に損することになります。

②ファティーグを狙ってくる相手への対策になる

ファティーグデッキの耐久力は基本的に上限があります。どれだけデッキを耐久に寄せたとしても、手札4枚の防御と、格納庫に防御リアクションなどを置いた分しか防御に使用することはできません。合計12点+格納庫の防御リアクションで4点が基本ですね。

そういった相手に、大量の《ルーン陣》を用意してから攻撃するというプレイや、《骨の鋳造》をプレイして、その次のターンに20数点のダメージを出すといったプレイがファティーグデッキのライフを減らすために有効な手段になります。ファティーグデッキは基本的に防御にのみ使えるカードを複数枚採用しており、手札4枚を攻撃に変換するのが苦手なので、「①防御に使用したいカードを腐らせることができる」も狙いやすいですね。

しゃがみのデメリット

①ライフがギリギリの状況で弱い

「しゃがみ」に適したカード達が持つ「次のターンに表現価値を持ち越す」特徴は、裏を返すと、次のターンが来なければ意味のないカードになってしまうというデメリットにもなります。ライフが1vs1のような状況で《骨の鋳造》などをプレイしても、返しの相手の反撃でそのまま負けてしまったり、手札を全て防御に使用せざるを得ず、《剛力》トークンが無意味になってしまったりします。《邪悪な詠唱》なども、プレイしてから《ルーン陣》3つを出すのに2ターン以上かかってしまうため、残り1-2ターンで決着が着くような状況では弱いカードになり、アグロ相手には弱いシチュエーションがあります。

②次のターンの行動が制限されてしまう場合がある

《ルーン陣》などには無いデメリットですが、《骨の鋳造》などの《剛力》トークンや《敏捷》トークン、守護者クラスのオーラや《震激》トークンなど、次の自分ターンに壊れてしまうバフ効果にあるデメリットになります。

これらをプレイした次のターンは攻撃をしないと勿体ない状況になる為、例えば相手が強力なヒット時妨害効果を持った攻撃をしてきた場合「諦めて受けて、次の攻撃をする」か「前のターンを無駄にして、ヒット効果を防ぐ」の嫌な二択を背負うことになってしまいます。ライフや状況に合わせた柔軟なプレイができなくなってしまう、ということですね。

しゃがみを意識したプレイの例

例として《ヴィセライ》対《アイラ》の試合を見てみましょう。

後手1ターン目の《アイラ》が青ピッチして《調和の小太刀》1点の後、《最も脆い所》7点で攻撃した状況。

《ヴィセライ》側の手札は《ルーンレイジャーの群れ》2枚と《邪悪な詠唱》と《ルーン占い》。

返しの《ヴィセライ》の攻撃を考えると、《邪悪な詠唱》プレイ→《ルーンレイジャーの群れ》→《ルーンレイジャーの群れ》→《ルーン占い》をプレイしてターン終了で、3点、ルーン陣2点+3点、ルーン陣4つ残して終了で、合計12点と《邪悪な詠唱》が残る良い手札です。そのままノーブロックで7点を受けて殴り合いに持って行ってもよさそうですが…ここであえて「しゃがむ」プレイがあります。《ルーンレイジャーの群れ》2枚を防御に使用して、《邪悪な詠唱》と《ルーン占い》をプレイし、《ルーン陣》だけ貯めてエンド。

このようなプレイをすれば、次のターン《アイラ》側の「防御に使用したかったカード」が腐ってしまうといった展開を狙えます。《ケイヨ》などのヒーローでも、2枚防御に使用しつつ、《骨の鋳造》をプレイし、1枚格納庫に残して終了などで似たような「しゃがみ」ができます。

また、《フローリアン》など墓地の大地カードを「腐解」していくことで強くなるヒーロー相手には、序盤数ターンを「しゃがみ」続けることで、防御により「大地」カードを墓地に貯めることを許さず、「腐解」の進行を遅くすることができるといったメリットもあります。

「しゃがみ」の対策

ではどのように「しゃがみ」を対策すれば良いのでしょうか?結論から言うと、サイドインアウトで「しゃがみ」を対策する必要があります。上記のようなミッドレンジヒーローは「防御に2-3枚のカードを使用することを前提として構築している」と話しました。では、その弱点をなくすためにできるのは「防御用のカードを攻撃用に変換すること」です。つまりサイドインアウトですね。《アイラ》は非常に分かりやすい例です。防御用の防御リアクション《群青へ沈む》などを、《Double Strike》、《傷には傷を》、《Spinning Wheel Kick》などの続行を持つ攻撃的なカードに入れ替えることで、「手札が余ってしまう」ことを防げます。

これらの攻撃的なカードは相手が《エニグマ》などの連続攻撃が必要なマッチアップでも役立つカードですが、《ヴィセライ》のような「しゃがみ」が得意なヒーローにも有効なんですね。もちろん、《アウローラ》や《ゼン》など「しゃがみ」があまりできない一般的なアグロデッキには《群青へ沈む》《宙返り》などの防御リアクションが強力なので使い分けが重要です。

オマケー汎用的な「しゃがみ」についてー

上記の「しゃがみ」は《ヴィセライ》など次のターンに表現価値を持ち越すのが得意なヒーローに特に関連する戦略解説でした。

オマケとして、どんなヒーローでもできる「しゃがみ」についてちょっと解説します。表現価値を持ち越すことができないヒーローでも「しゃがみ」は可能です。

それが、相手の攻撃が緩むタイミングまで可能な限り防御して、ライフを温存するプレイです。

特に、手札が全部赤いカードや青いカードになると大きく出力が下がるヒーローや、《アザレア》や《ヴィセライ》のような特定の組み合わせで攻撃ができなくなるようなヒーローには狙うリターンがあります。
中盤の展開でどうしてもライフ差がついてしまい、このままだと負ける、という時はライフを守る「しゃがみ」のプレイに徹して、相手のハンドが良くないターンを待つことが勝機に繋がるかもしれません
コツとしては、ライフ1桁のような状況になってから「しゃがみ」に入るのではなく、6-8点の攻撃ならフルテイクできるライフ、10-12点ほどを目安に「しゃがみ」に入るのがオススメです。また、相手のデッキの枚数が減っている状況ならゲーム序盤にピッチした青いカードがたくさん手札に入る頃合いになっているかもしれません。その辺りも加味して「しゃがみ」に入るか否か判断できると理想的ですね。

まとめ

・「しゃがみ」は敢えて攻撃をしないことで相手の防御用カードを腐らせることで得するテクニック

・特に防御用のカードを採用したり、手札の都合で防御したいミッドレンジとファティーグデッキに有効な技術

・逆にアグロデッキ相手には「しゃがみ」によるテンポロスがデメリットになることもあり

・対策するには防御用のカードを攻撃用のカードと入れ替えよう!

以上です。

「しゃがみ」「しゃがむ」って対戦したり感想戦してるとよく言うけど、初心者からしたら意味わからんスラングだよなぁってふと思い、意味を説明しようと掘り下げると色々と戦略的な話になりました。

お読み頂きありがとうございました。


Hiroyuki Tansei/どくいろ @fab_dokuiro
お気に入りヒーロー:《Lexi》,《Fai》,《Kayo》
お気に入りカード:《Art of War》
ホームショップ:TableGameCafe’Shuffle、TCG Shop Go Again
史上初の日本選手権で優勝。CallingTokyoTop8。日本屈指の強豪プレイヤー。手数、打点を読む洞察力が強み。アグロデッキが得意。

みんなのコメント

  • GoAgainMediaの名無しさん より:

    しゃがみを行うべきタイミングやしゃがみを行うためのデッキ構築ポイントが分かりやすくまとまっており非常に参考になりました!
    とても有用な記事ありがとうございます!

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