2024/9/4、FaB史上最大規模の禁止改定が行われました。(公式記事はこちら)
Blitz、CC共に禁止措置をうけることになったカードは以下8枚。
《Art of War》
《Bonds of Ancestry》
《Orihon of Mystic Tenets》(神秘の教義の折本)
《Tome of Divinity》
《Tome of Fyendal》
《Tome of Aetherwind》
《Cash In》
《Tome of Firebrand》
8枚ものカードが9月9日より禁止措置を受けることとなりました。その理由は《Art of War》、《Bonds of Ancestry》のように「現環境で活躍しているカード」のみならず、「FaBの本来意図したゲーム性」から外れるゲーム体験をもたらすカード達を危険視しての改定だからです。詳細は公式の禁止改定ページにて記載されていますが、《Cash In》や《Tome of Firebrand》のようなカードは現環境では活躍していませんが、将来的な危険性や、「過剰なドローにより1ターンの爆発力が高まりすぎたゲーム体験」に繋がるからですね。これは他のTCGと比較して珍しい規制方針でしょう。
次に、これらの規制によって影響を受けるヒーローをまず整理していきます。
目次
《Art of War》
影響を受けるヒーロー:Zen,Katsu,Fai,Levia,Vynnset
今回の改定で、《Art of War》の禁止が間違いなく影響が最も大きいでしょう。
数々のデッキで高い採用率を誇る《Command and Conquer》、《Enlightened Strike》と並び”三種の神器”と呼ばれていたカードです。
《Art of War》は4つのモードを持つ柔軟なカードですが、最も良く選択されたモードは「このターンの自分の攻撃アクション℗+1Ⓓ+1」と「手札の攻撃アクションを1枚追放して2枚引く」モードです。事実上、1リソースの消費のみでターン中の攻撃アクションを全て℗+1するバリューはFaiやKatsuといった連続攻撃を得意とするヒーローによく採用され、活躍してきました。更に、かつては追放領域からカードをプレイできるChaneで猛威を振るい、そして2024年6月、手札に《臥虎》を加えることができるZenによりそのバリューはついに壊れました。わずか3カ月でLLポイントを600近く稼いだZenの活躍の半分は間違いなく《Art of War》によるものです。Zen,Katsu,Faiの忍者クラスの3ヒーローは間違いなく競技シーンでの影響力を減らすことになります。
また、LeviaやVynnsetといったShadowクラスのヒーローでは「手札の攻撃アクションを1枚追放して2枚ドロー」と「次の攻撃アクションに続行を与える」モードで使用し、手札枚数を減らさずに連続攻撃を可能にする役割で採用されていました。
特にLeviaでは《Slithering Shadowpede》とのシナジーはすさまじく、《Art of War》で追放した《Slithering Shadowpede》をそのままプレイすることができました。Vynnsetでも手札の”ルーン門”(Runegate)を持つカードを追放しながら2枚ドローし、続行を与えた追放したカードで攻撃、更に何かしらの手段でルーンチャントトークンを展開してルーン門カードで攻撃…といった連続攻撃を可能にしていました。
Leviaは忍者クラスに勝つのを苦手としていたので、忍者クラスが打撃を受けたこと自体は追い風ですが、Levia本人もデッキパワーの低下が否めない結果です。Leviaは今後《Art of War》なしでも強い構築が現れるかどうかが焦点となるでしょう。VynnsetはLeviaほどArtofWarからの連続攻撃に依存していたわけではありませんが、シナジーしていたカードではあるので、続行を付与するアクションを増やしたり、連続攻撃しないコンセプトで戦うなど別のアプローチが要求されるでしょう。
《Bonds of Ancestry》
影響を受けるヒーロー:Zen,Katsu
最強の「コンボ」カードと称され、前回の改定で黄色と青が規制されたカードがついに全種禁止となりました。条件を満たすと1枚で概ね0コスト7-8点相当になりだけですさまじい表現価値なのですが、
更に《Bonds of Ancestry》で墓地の《Bonds of Ancestry》自体を追放するプレイや、《Art of War》下や《Ansectry Harmony》下でプレイすることで1枚10点以上になることがよくありました。
コンボを得意としてたZenとKatsuは大打撃となります。
《Orihon of Mystic Tenets》(神秘の教義の折本)
影響を受けるヒーロー:Zen、△Enigma
《神秘の教義の折本》は《内なる気》をピッチすることでピッチ用の気、青、《折本》の3枚消費で2リソース得しながら3枚ドローするカードです。特にZenでは胴装備《十二花弁の袈裟》による1リソース生成を活かすことができれば、超越した《内なる気》とこのカードの2枚の消費で3枚ドローが可能であり、ビッグターンに繋がりやすいカードでした。
Enigmaでもまれに採用されていますが、Zenほど取り回しは良くなく、また結界を守りたい際に役立たないカードだったので、採用・不採用の波はあり、規制の影響はそこまでないでしょう。Nuuも採用自体は可能ですが、《内なる気》を頭装備《繰り返す悪夢の仮面》に使うという強力な使い道があること、大量ドローとそこまで相性が良いヒーローではないことの2点から採用されてこなかったため、影響は全くないでしょう。
《Tome of Divinity》
影響を受けるヒーロー:PrismAoS
PrismAoSに概ね3枚採用されてきたドローソースが規制を受けました。
PrismAoSはライフがどれだけ差がついていても《Suraya,Archangel of Erudition》の隣に《Arc Light Sentinel》を設置する盤面を作ることができれば逆転することが可能なヒーローですが、その盤面を1ターンで作るのに役立っていたのが《Tome of Divinity》のような手札を増やすカードでした。特に、ソウルが入り、胴装備《Vestige of Sol》のLightカードのピッチ時リソースが1増える効果が有効になっていると、Lightの青をピッチするだけで《Tome of Divinity》をプレイ可能になり、アンフェアな動きに繋がっていました。
規制により、PrismAoSはアンフェアな盤面を作りづらくなり、全体的な勝率を少し落とすこととなりそうですが、基盤の強さは維持している状況でしょう。ポッパーが少ない相手や軽減能力が有効な相手には依然強いヒーローではあります。
《Tome of Fyendal》
影響を受けるヒーロー:Kano,△Dash I/O
ドローをして、かつアーセナルからプレイしていれば手札の枚数だけライフゲインする強力な効果ですが、続行が付いていないため、何らかの手段で続行を付与する/インスタントとしてプレイする/アクションポイントを獲得するの何れかをしないと強くプレイできないカードです。
反面、アクションカードのインスタント化してプレイすることを得意とするKanoにはほぼ必ず採用されてきたカードかつ、足装備《Achiles Accelerator》の起動や、《High Octane》、ヒーロー能力によりデッキトップからItemを出してCrankするといった、アクションポイントを増やす手段が多いDash I/Oでもよく採用されてきました。
今後も上記何れかが得意なヒーローが現れるたびに頭角を現す可能性のあったカードなので、規制対象となりました。《Kano》はデッキトップから《Tome of Fyendal》を捲ることで手札を増やして早めにコンボターンを作ることが難しくなるため、アグロ系ヒーローへの勝率が落ちるでしょう。
Dash I/Oでは爆発力より安定性を意識した構築では不採用とされていたケースもあるので、リペア可能な範疇かと思われます。
《Tome of Aetherwind》
影響を受けるヒーロー:Kano
《Tome of Fyendal》同様、Kanoの能力でデッキトップから捲ることで1枚が2枚になる強力なカードでした。これら2種のドローカードが規制されたことで、Kanoはピッチスタッキング(ピッチしたカードを記憶し、山札を任意の順番に作り変える技術)を使っての、ターンをかけてのコンボは依然可能ですが、アグロデッキ相手にライフを追い詰められて、デッキトップが不確定の状況でKanoの能力を起動していくパターンのコンボの成功率は非常に落ちることになるでしょう。Kanoは環境が非常に低速化した時や、ABが減ってきた時だけ現れるポジションになるかもしれません。
《Cash In》
影響を受けるヒーロー:Kassai,Olympia
こちらは将来的な危険性を危惧しての改定なので、《Art of War》のように環境で暴れていた!という訳ではありません。ですが、金トークンを主軸として戦うOlymipaとKassaiでは使用されていたケースもあったので、ドローして高出力のターンを作ったり、1-2枚の少ない手札から《Cash In》でドローしてしっかりと打点を返すような戦術は難しくなりました。とはいえ、防御的な構築のKassaiでは防御値2である点や金トークンが出せていない序盤に引くと弱い点を嫌い、不採用であることもよくあったため、影響は大きい!という訳ではありません。
《Tome of Firebrand》
影響を受けるヒーロー:Fai
使用するための条件が厳しいため、余り主流なカードではありませんでしたが、ビッグターンに使用できると強力であるため、爆発力を意識したFaiの構築では1枚だけ採用されることがありました。ただ、Fai自体が《Art of War》の規制や、墓地から《Phoenix Flame》を追放するカードの増加などで環境で戦うことが厳しいヒーローになるので、影響の薄い改定であり、将来性を見込んでの改定です。
改定の影響まとめ
纏めると以下のような感じです。
被害△:Dash I/O,Olympia,Vynnset
被害〇:Levia,Prism
被害◎:Zen,Fai,Katsu,Kano
今後の環境予想
では、続いて禁止改定を受けて各ヒーローの立ち位置はどのように変わるかの予想をします。
規制後のTier表予想が以下です!
勿論、あと9月20日発売予定である新セット”ロゼッタ”の影響次第で変わる予想になりますが、とりあえずZenが頂点からいなくなった環境は以下のようになるでしょうという予想です。
まず、Zen以外には幅広く高い勝率を持っているものの、Zenにのみどうしても不利がついていたEnigma、Zenキラーかと思いきや、他の雑多なヒーローにも勝っていた地力十分なNuu、MST発売前は圧倒的なアベレージ打点の高さで環境の王になっていたKayo。
これらEnigma、Nuu、Kayoの3ヒーローが環境の中心になると思われます。
その3ヒーローの内1-2人に優位を付けることができたり、他雑多なヒーローに強いヒーローがA帯にいるメンツになります。環境が低速化するので、Dashは今後はControl Dash(Boostを殆どしない長期戦志向のDash)も活躍するかもしれません。
全体として、MST環境に比べるとかなり混沌とした、多くのヒーローにチャンスがある環境になるでしょう。Zenは余りに多くのヒーローを排斥していました。B帯までは勿論、C帯に置いたヒーローが100人以上参加する大会のTop8にいることもあり得る環境になるでしょう。
ここに、ロゼッタのヒーロー達が参戦し、どんな影響を与えるのか、11月の世界選手権はどんな環境での大会となるのか、今から楽しみです。
以上です。お読み頂きありがとうございました。
Hiroyuki Tansei/どくいろ @fab_dokuiro
お気に入りヒーロー:《Lexi》,《Fai》,《Kayo》
お気に入りカード:《Art of War》
ホームショップ:TableGameCafe’Shuffle、TCG Shop Go Again
史上初の日本選手権で優勝。CallingTokyoTop8。日本屈指の強豪プレイヤー。手数、打点を読む洞察力が強み。アグロデッキが得意。
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