【FaBデッキリスト分析録】#2 Battle Hardened 大阪優勝 Zen, Tamer of Purpose

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概要

このシリーズは大会で結果を出したリストを取り上げて、各カードの採用理由や、ヒーローの勝因を推理・考察するシリーズです!このシリーズを読んでいるだけで、「基礎的なカードの使い方」から「環境に合わせて採用すべきカード」や「ヒーローの選び方」が培われていくはず!という企画になります。
今回はMST(霧隠の秘境 Part the Mistveil)シーズン 2024年6月-9月のリストになります。

本文

GoAgainMedia攻略記事担当のdokuiroことTansei Hiroyukiです。
今回取り上げるデッキは8月24日にて開かれたBattle Hardened 大阪で優勝したZen!
(Battle Hardened 大阪はフォーマット:CC、参加者105名、予選7ラウンドからのSE3回戦の大会となりました 大会のメタゲームなど詳細はこちら)

Fabraryリンクはこちら

[Red]
3:《Aspect of Tiger: Body》
3:《Bonds of Ancestry》
3:《Chase the Tail》
3:《Command and Conquer》
2:《Descendent Gustwave》
2:《Down But Not Out》
3:《Enlightened Strike》
2:《Flic Flak》
3:《Hundred Winds》
3:《Spinning Wheel Kick》
2:《The Weakest Link》
3:《Tiger Swipe》
[Yellow]
3:《Art of War》
2:《That All You Got?》

[Blue]
1:《A Drop in the Ocean》
3:《Ancestral Harmony》
2:《Descendent Gustwave》
1:《Homage to Ancestors》
3:《Hundred Winds》
3:《Levels of Enlightenment》
1:《Orihon of Mystic Tenets》
1:《Pass Over》
1:《Path Well Traveled》
1:《Preserve Tradition》
1:《Rising Sun, Setting Moon》
1:《Sacred Art: Jade Tiger Domain》
3:《Snag》
1:《Stir the Pot》
1:《The Grain that Tips the Scale》
3:《This Round’s on Me》
3:《Warmonger’s Diplomacy》
3:《Wind Chakra》

[Weapon]
《Harmonized Kodachi》
《Harmonized Kodachi》
《Tiger Taming Khakkara》
《Zephyr Needle》
《Zephyr Needle》

[Equipment]
《Stride of Reprisal》
《Tiger Stripe Shuko》
《Time Skippers》
《Traverse the Universe》
《Twelve Petal Kāṣāya》

優勝したYoshiki Mizutani選手は6月に開催されたCalling東京(MSTリミテッド)でもベスト4と日本人最高戦績を残した強豪選手です!

今回はリスト解説の前にMST環境の環境遷移を追って解説します。

ZenをとりまくMST環境について

まずMST発売後、環境初期はZenの圧倒的なビートダウン性能による活躍が目立ちました。当サイトの環境ウォッチング(リンクはこちら)でもその遷移は確認できますが、6月半ば~7月初頭に開催された国別選手権にて各国でZenが大量に勝ちました。

このままZenによる支配が続くかと思われていましたが、国別選手権後半の環境では「NuuがZenに勝てる」という攻略が確立され、日本や香港でNuuがZenを下して優勝する結果となりました。

そして、その後の禁止改定で強力なコンボカードである《Bonds of Ancestry》の黄色と青がCCフォーマットにおける禁止カードに指定されました。

この改定により、Zenはゲーム前半やビッグターンの爆発力は保持したまま、《Bonds of Ancesty》が3枚しかないことで「デッキの強力なコンボを使い切る」展開になりやすくなり、中長期戦に持ち込んでくるNuuやUzuri、Victorに対してより不利になりました。

Fabrary統計(2024年8月度)

その結果、「Zenは依然、最強格のアグロ・コンボデッキだが、デッキ単位で対策を取っている妨害豊富な相手には不利」という状況となり、PTアムステルダムでのUzuriの優勝Calling: ManilaでのNuuの優勝へと繋がっていきます。

直近の大型大会でZenは基本的に”使用者最多”かつ、”Top8にも複数人残っている”が、”苦手なAssassinに負けてなかなか優勝まではいけない”という大会結果が続いている状況で、Battle Hardened 大阪が開催されました。

そういった環境で”決勝戦でNuuに勝ち優勝したZen”が今回分析する優勝リストになります。よって着眼点は「いかにしてZenが対策されている中で優勝したのか」「不利対面であるNuuをどうやって突破したリストなのか」となります。

リスト分析-装備品-

独創的な装備品の採用が光ります。なんといっても武器を5枚採用している点でしょう。

お互いノーブロックで試合が展開しがちなアグロ相手に強力な《Zephyr Needle》2枚、中長期戦をする相手用の《Tiger Taming Khakkara》(=《虎手懐けの錫杖》)までは多くのZenが採用しています。が、《Harmonized Kodachi》2枚の採用は革新的です。Zenのリストは色々と見てきましたが、このカードを採用して結果を出したのはMizutani選手が初めてです。

《Harmonized Kodachi》は長期戦にならざるを得ない不利マッチ、主にNuuやUzuri相手への対抗策でしょう。

手札破壊やアーセナル破壊などの妨害効果が豊富なNuu相手にはZen本来の動きである「手札とアーセナルのカード全てを使ったビッグターン」を作るのが困難です。そういった相手にはじっくり戦わざるをえなく、その際に例えば手札2枚を防御に使用、手札1枚を手札破壊された状況の後でも、青ピッチ《Harmonized Kodachi》→《Harmonized Kodachi》で1点の攻撃を2回しかけることで、最低限相手のライフを削りやすくなります。《Tiger Taming Khakkara》の2点の攻撃1回よりも1点の攻撃2回の方が防ぐのが困難ということですね。

ただ、《Harmonized Kodachi》にもデメリットはあります。それは
①0コストをピッチしなければ続行がつかない
②デッキスロットを2枠取る

の2点があり、主に①の懸念点からZenに《Harmonized Kodachi》は採用されてきませんでした。Zenには《悟りの段階》、青《Descendent Gustwave》、超越の裏側である《内なる気》など0コストでない青が複数枚含まれるデッキです。

Mizutani選手はこの問題をサイドインアウトによって解決しているようです。この点については後程、メインボードやサイドカードについて記載する点で解説します。

武器以外の装備品では2点目立つ点があります。
1つ目はArcane Barrier装備の不採用。これは《Harmonized Kodachi》を採用した弊害と、日本のメタゲームにKanoが少ない点を読んだ調整でしょう。
2つ目は《Time Skippers》の採用。こちらはPrismの《Arc Light Sentinel》対策となる装備品です。Zenは《Art of War》や《Ancestral Harmony》をプレイするビッグターンに《Arc Light Sentinel》を合わせられると致命的な損失となってしまいますが、《Time Skippers》でアクションポイントを増やすことで対策できます。

リスト分析-メイン-

Zenの基本パーツについて

Zenに基本的に「超越」と「コンボ」を軸にしたデッキである関係上、所謂固定スロットに当たるカードが非常に多いです。

《Art of War》と《Ancestral Harmony》は間違いなくZenのキーカードと言える2種のカードです。どちらもこのターンの攻撃アクションを全て強化するカード(《Ancestral Harmony》はコンボ限定)で、これらのカードを使用してから連続攻撃を繰り出して1ターンで30点や40点のダメージを出せることこそがZenの強みです。

特に《Art of War》の「手札からアクションカード1枚を追放して2枚引く」モードのコストに、Zenの能力や足装備《報復の闊歩》で手札に作成した《臥虎》トークンを当てる動きが非常に強力です。

超越を持つカード合計9種類は可能な限り採用し、それらとシナジーする強力なカードである《悟りの段階》、《神秘の教義の折本》は採用されます。《風のチャクラ》も超越と相性が良く、かつ防御値3である点が優秀であり《Bonds of Ancesty》規制後は採用率が高くなっています。

コンボカードでは《臥虎》に関連する《尻尾追い》《虎の相:体》《Tiger Swipe》は基本的に採用されます。《尻尾追い》はコンボを満たせば1コストで7点と非常に強力で、Zenの能力で《虎の体:相》をサーチすることで簡単に《臥虎》2枚を用意できます。《虎の相:体》は《尻尾追い》とのシナジーは勿論、《Art of War》をプレイしているターンにコンボを満たすと1枚で0コスト5点相当になる優秀なコンボです。《Tiger Swipe》はZenの能力のサーチ先として使うことで《Tiger Stripe Shuko》の効果が乗り0コスト5点続行として使用できます。

赤青《Descendent Gustwave》、《Bonds of Ancesty》はコンボを達成することで概ね2枚から3点→4点→3点など10点以上のダメージに繋がる強力なコンボです。条件を満たした《Bonds of Ancesty》は0コスト4点続行に加えて墓地のコンボを追放し同名コンボをプレイ可能にする能力と破格の一言。

これに《Art of War》や《Ancestral Harmony》をプレイしていた場合更にダメージは全て℗+1されていきます。青《Descendent Gustwave》は超越に繋がり、そこから発生した《内なる気》で《Bonds of Ancestry》をサーチできるため、Zenでは重用されます。

基本的に《Descendent Gustwave》は赤青合わせて5-6枚採用が多く、最近は赤2枚、青3枚が主流です。Mizutani選手は赤2枚青2枚採用と一般的なリストより絞り気味です。これは《Bonds of Ancestry》を使い切った後に弱い点や、防御値2である点、《Harmonize Kodati》との兼ね合い等を加味した、つまり不利マッチなどの中長期戦を見据えた調整だと思われます。逆に短期決戦を意識した、所謂「ブン回り」を意識した構築だと《Descendent Gustwave》の採用枚数は増やす構築になるでしょう。

《Spinning Wheel Kick》、赤青《Hundred Winds》は素で続行を持つコンボカードです。コンボの達成を狙うというよりは《Ancestral Harmony》及び《Bonds of Ancesty》とのシナジーが優秀故に採用されているといった感じですね。青《Hundred Winds》は0コスト続行の青であるため、超越カードと相性が良い点も優秀です。

《Command and Conquer》、《Enlightened Strike》、《最も脆い所》

《Command and Conquer》、《Enlightened Strike》の2種は最初期のコンボによる攻撃に特化したリストではあまり採用されていませんでしたが、ここ1か月くらいはそれぞれ3枚ずつの採用が主流になっています。

《Command and Conquer》はミラーマッチやNuu相手にも格納庫を攻める効果により防御を強要しやすい点が強力であり、特に《Art of War》のターンの最後に℗7点でプレイできると理想的です。妨害効果持ちの攻撃をされ、2枚防御に使ったターンの切り返しとしても優秀です。

《Enlightened Strike》は使いやすく優秀なうえに、ZenやKatsuといったデッキからのサーチが可能なヒーローでは手札に《Bonds of Ancesty》のようなコンボカードが単体で来てしまった際に、山札の一番下に送って、サーチ先として温存できる点も優れています。

《最も脆い所》はZen、Nuu、Enigma、Kayoといった環境の多くのヒーローに効果的である点を見ての採用でしょう。《最も脆い所》はZenには0-3枚採用と構築により幅があるカードですが、Mizutani選手は2枚と決めたようです。《Command and Conquer》と《最も脆い所》は《Harmonize Kodachi》を装備している場合、青ピッチから武器1点→2コスト6点と綺麗に繋がるのも採用理由として大きいですね。

《This Round’s on Me》

こちらも採用しているリストとしていないリストで分かれるカードで、主にZen同士のミラーマッチでプレイのバリューがあるカードです。他採用候補となる青いカードとしては《噛みつく息吹》、《虎変化の術》、《狩りの調和》などがあります。

これらのカードと《This Round’s on Me》は一長一短の関係です。特に《噛みつく息吹》は0コスト続行であり各種超越と相性が良い点、ヒット時に《臥虎》を作成する能力により《尻尾追い》のコンボが狙える点などから高い採用率を誇りますが、防御値が3と中長期戦に強い点や、ミラーでの性能を加味して《This Round’s on Me》に軍配が上がったのでしょう。

サイドカードについて

《Flic Flak》、《That All You Got?》、《Snag》

これらは対Assassinとしての役割が大きいサイドカードとなります。

《Flic Flak》は4点の防御リアクションとして、ヒット時能力を持つ攻撃アクションを防いだ後、攻撃リアクションをプレイされた後に後出して防ぐ手段となり、《Snag》はそもそもの上昇を無効化できます。《Snag》はNuuや《Pummel》にしか効かないため、少し使えるシチュエーションが狭いカードですが、青なのでピッチとしても有用なのが利点ですね。

《That All you Got?》は上記のような使い方の他にも、Assassinの武器であるダガー、特に装備品の防御値をマイナスする《Scale Peeler》を防ぐのに使用することで、手札の損失なく《宇宙の横断》や《報復の闊歩》を防御に使用してビッグターンを作れる可能性を上げてくれます。

《That All You Got?》はミラーマッチやDash I/Oといった2点の武器を装備してくる相手にも有効です。《Flic Flak》はVictorのような《Pummel》でZen対策をしてくる相手、KayoやLeviaのような5以上の連続攻撃をしてくる相手にも有用です。

《Down But Not Out》

Zenのリストは色々と見てきましたが、このカードを採用して結果を出したのはMizutani選手が初めてです。(2回目)
そもそもリミテッドで重宝された、構築シーンでは全く注目されてこなかったカードになります。というのも、条件を満たせば強力なカードですが、その条件を満たすことが困難だからですね。

ですが、Zen VS Victorに限ってみればこのカードの条件は用意に達成されます。「装備品の合計数」はVictorが盾を装備しているため基本的に1つ多く、盤面には大体「金」トークンが出ているため、トークンの合計数もVictor側が上回ります。

なので対Victorに限ってはこちらのライフさえ低ければ大体達成できるわけですね。このカードの採用に至った研究力には脱帽です。つまり、Nuuには《Harmonize Kodachi》、Victorには《Down But Not Out》を対策カードとして持ち込んでちゃんと不利対面の克服を満たしたリストがこのリストということです。

《Warmonger’s Diplomacy》

一般的にAzalea対策として採用されるこのカードですが、《Harmonize Kodachi》を採用しているこのリストでは「青の0コスト」という点も重要です。《Harmonize Kodachi》を装備するマッチアップでは《This Rond’s on Me》などの1コストの青と入れ替える役割を持つこともできます。

本人からのコメント

前回に続いて今回も個人的に親交のある選手なので、プレイした本人に、この分析を読んでのコメントを頂こうと思います。Mizutani選手、ご協力ありがとうございます。

何点か補足します。
まず、Zenでよく採用される《Mauling Qi》を不採用としている点について。

不採用に至った理由は主に以下です。
一般的にgo againを持つ攻撃をした後、go againを持たない攻撃を最後に使用してターンを追えることが表現価値上優れているため、そういったプレイを好むプレイヤーが多いですが、Zenにおいては、攻撃をgo again無しで終わらせる必要は必ずしも無いと考えています。

Zenミラーでは「go againを持たず、相手への妨害効果を持たない攻撃をすること」が装備品を防御に使用してビッグターンで返される隙になりやすいです。なので、アクションは余らせておけばいいと考えています。
go againのないアクション被りが起こることや、ヒット時効果を持たない攻撃でターンを終わらせてしまう方が、《Mauling Qi》で得られる1〜2点より怖いと考えています。

更に、多くのマッチで《Zephyr Needle》か《Harmonized Kodachi》を装備するため、青ピッチから→《虎手懐けの錫杖》に2リソース使用して2点→Mauling Qiで1リソース使用して5点の「2+1」の動きをする必要がなくなったことも大きいです。

《Mauling Qi》を不採用にした枠を活かして《最も脆い所》を2枚採用する形になっています。《Zephyr Needle》で相手の手札を防御に使わせた後に《Command and Conquer》か《最も脆い所》の2コストヒット時効果を持つカードをプレイすることで、ヒットする確率を上げるか、相手が本来防御に使用したくなかったカードを防御に使用させることができます。逆に、2コストヒット効果持ちの攻撃アクションを一度見せると、相手はケアをして《Zephyr Needle》に手札の3点防御を使用しづらくなります。

これだけの文字数で日本チャンプに言語化してもらえるの贅沢過ぎて幸せです。
いろんなアイディアを試すのに協力していただいた名古屋コミュニティに感謝しています。

まとめ

・苦手なAssassinとVictorの克服を達成した革新的なZenのリスト!

・Assassinには《Harmonize Kodachi》、Victorには《Down But Not Out》で対策しよう!

・Kanoは諦めよう

以上です。お読み頂きありがとうございました。


Hiroyuki Tansei/どくいろ @fab_dokuiro
お気に入りヒーロー:《Lexi》,《Fai》,《Kayo》
お気に入りカード:《Art of War》
ホームショップ:TableGameCafe’Shuffle、TCG Shop Go Again
史上初の日本選手権で優勝。CallingTokyoTop8。日本屈指の強豪プレイヤー。手数、打点を読む洞察力が強み。アグロデッキが得意。

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