目次
概要
このシリーズは大会で結果を出したリストを取り上げて、各カードの採用理由や、ヒーローの勝因を推理・考察するシリーズです!このシリーズを読んでいるだけで、「基礎的なカードの使い方」から「環境に合わせて採用すべきカード」や「ヒーローの選び方」が培われていくはず!という企画になります。
今回はMST(霧隠の秘境 Part the Mistveil)シーズン 2024年6月-9月のリストになります。
本文
GoAgainMedia攻略記事担当のdokuiroことTansei Hiroyukiです。
記念すべき第一回で取り上げるデッキは7月6-7日に開かれた日本選手権で優勝したNuu!
Fabraryリンクはこちら
[Red]
3:《Censor》
3:《Command and Conquer》
3:《Fate Foreseen》
3:《Hiss》
3:《Just a Nick》
3:《Leave No Witnesses》
3:《Sigil of Solace》
3:《Sink Below》
3:《Siren’s Call》
3:《The Weakest Link》
1:《Venomous Bite》
[Yellow]
3:《Codex of Frailty》
1:《Eradicate》
3:《That All You Got?》
[Blue]
3:《Art of Desire: Mind》
3:《Bonds of Agony》
3:《Bonds of Attraction》
3:《Desires of Flesh》
3:《Hold the Line》
1:《Homage to Ancestors》
3:《Levels of Enlightenment》
1:《Pass Over》
1:《Path Well Traveled》
3:《Persuasive Prognosis》
3:《Pick to Pieces》
1:《Rising Sun, Setting Moon》
3:《Surgical Extraction》
1:《The Grain that Tips the Scale》
[Weapon]
《Beckoning Mistblade》
《Scale Peeler》
[Equipment]
《Arcane Lantern》
《Arousing Wave》
《Fyendal’s Spring Tunic》
《Mask of Recurring Nightmares》
《Nullrune Hood》
《Nullrune Robe》
《Undertow Stilettos》
《Vambrace of Determination》
しかも使用者であるXavier Mclean選手は、自分にとってチームメイトでもあり、FaBについて教えてくれた師匠でもあり、良き友人です。めでたい。親交ある選手の優勝…ということで、今回は特別に分析後、本人に答え合わせをして貰います。
リスト分析-装備品-
まずは装備品から。Assassinクラスの武器であるダガーはヒットすると特定のカードタイプの防御値を減らす効果を持っており、相手によって使い分けするのが定石。
攻撃アクションが多いBruteやNinjaには攻撃アクションの防御値を減らす《Spider’s Bite》を。攻撃リアクションが多いWarriorや防御リアクションが多いFatigue系相手には《Nerve Scalpel》を装備して挑む。
といった形で武器を使い分けるのが主流であり、環境を踏まえながらも、だいたいのAssassinのリストにはダガーは3-4種デッキに入っていることが多いです。
ローマ選手権で優勝したNuu(リストはこちら)や、日本選手権準優勝のUzuri(リストはこちら)、どちらも3本のダガーを採用していますね。
が、Xavier選手のNuuはダガーを《招き寄せの霧刃》《Scale Peeler》の2本に絞っています。
特に《Spider’s Bite》を採用していないのは珍しいでしょう。攻撃アクションが多数を占めるデッキはBruteクラスやGuardianクラス、Mechanologistクラスと多く、それらに対して《Scale Peeler》を装備していくのは一見不利な行為に見えます。この理由を分析してみましょう!
①《Scale Peeler》が強い環境である
まずこれは間違いないでしょう。環境TierSに君臨し、日本選手権でも34人の使用者が居た《Zen》に《Scale Peeler》は効果的です。《Zen》は頭装備《宇宙の横断》、胴体装備《十二花弁の袈裟》、腕装備《Tiger Stripe Shuko》を防御に回すことで防御値が2+2+2でⒹ6点となります。《Command and Conquer》や《最も脆い所》などの妨害攻撃アクションを装備だけで防ぎつつ、返しのターンに温存した手札で爆発的なダメージを出すことを得意としています。
ですが、《Scale Peeler》がヒットしていた場合、その後プレイされた《Command and Conquer》などを装備だけでは守り切れないため、手札からカードを使用して守らざるを得ません。Bruteクラスなども装備が強力であり、手札の防御値が低いヒーローなので《Scale Peeler》が効く状況は多そうです。
②《Scale Peeler》が効きづらい相手には《招き寄せの霧刃》で攻撃すれば良い
装備品での防御をあまりしないヒーロー、AssassinクラスミラーやRangerクラス、Wizardなどの相手には《招き寄せの霧刃》が有効に見えます。《招き寄せの霧刃》がヒットした後に《惹きつける予後》や《悟りの段階》をプレイできると非常に強力です。
《招き寄せの霧刃》はPiercingを持たない為、装備による防御に弱いという弱点がありますが、装備が硬い相手には《Scale Peeler》が効いて、装備が薄い相手には《招き寄せの霧刃》が通りやすいとお互いを補完しあっている関係になります。
③ダガーを減らすことにより、デッキ総枚数を増やせる
装備品の枠を減らすことで、デッキに入れることができるカードの総枚数が増えます。XavierのリストはFatigueによる勝利を狙っている構成なので、この1枚の差が勝敗を決するシーンも多そうです。
上記3つの理由により、武器が2本に絞られたのだと予想します。環境を読み切り、武器の性質を把握しきった上での大胆な選択と分析しました!
他の装備品はオーソドックスな採用。Wizard相手にはArcane Barrierを持つ装備に付け替え、軽減効果が豊富なEnigma相手には腕を《Vambrace of Determination》に付け替えるのでしょう。
リスト分析-メイン-
《擦れ音》、《苦悶の束縛》、《惹きつける予後》、《ほんの切り傷》、《悟りの段階》
3枚採用されている《擦れ音》、《苦悶の束縛》、《惹きつける予後》、《ほんの切り傷》、《悟りの段階》はいずれも殆どのNuuのリストに3枚採用される優秀なカード達です。
Nuuというヒーローの根幹を支えるカードと言っても過言はないでしょう。手札が2-3枚ある状況でプレイする《苦悶の束縛》と《惹きつける予後》は攻撃リアクションによって何点になるか、続行が付いてその後更に妨害効果を持った攻撃が来るのか否か、非常に読み辛く、多くの状況でヒット時の効果の発動が狙え、強力です。
《Leave No Witnesses》、《Codex of Frailty》、《Surgical Extraciton》
Assassinクラスの強力なカード3種もばっちり採用。《Leave No Witnesses》はアーセナルを狙い、《Surgical Extraction》は手札を狙う妨害効果を持っています。
《Surgical Extraciton》はNuuで使用する場合、青い攻撃アクションなので超越及び頭装備《繰り返す悪夢の仮面》と相性が良く、他のAssassinクラスよりも更に強く使うことができます。青をピッチして《Surgical Extraciton》をプレイ、Nuu側に手札が1枚残っている場合
①《擦れ音》といったAssassinクラスの攻撃を強化できる攻撃リアクションで強化される場合
②「超越」カードをプレイしそのまま《繰り返す悪夢の仮面》を起動して手札を1枚追放してくる場合
③アーセナルにカードを置いてパス
の3パターンを考慮しなければならず、完璧に対応することは困難です。
《Codex of Frailty》は殆どのAssassinとRangerに採用されるパワーカードですね。Uzuriなどがよくやる《Codex of Frailty》をプレイし、《Leave No Witnesses》を墓地から回収してプレイする動きはNuuでも非常に強力です。
《Command and Conquer》、《Censor》、《最も脆い所》
これらは汎用属性のカードであり、どのクラスでも使用できますが、いずれも優秀なヒット時妨害効果を持つことから、攻撃をヒットさせることが得意なAssassinとは相性が良いカードになります。
特に《Censor》は《セイレーンの呼び声》の手札確認と組み合わせたり、《Codex of Frailty》で相手が回収したカードを宣言することで確実に正確なカード名を指定し、次のターンのプレイを禁じることができます。
《最も脆い所》はZenやNuuといった神秘タレントを持つヒーローへの対策カードという面が強いですが、2コスト6点に防御値3と優秀な基本性能を持つ上に、手札が破壊が空ぶっても相手の手札を確認することで次のターンの防御が簡単になる点で優秀です。
また、これら汎用クラスのカードも腕装備《刺激的な招き》から生成する《牙の一撃》トークンで℗+1点できます。これが何を意味するかというと、Nuuが青ピッチしてプレイする《Command and Conquer》を、相手は手札2枚のⒹ6点で防いだ場合、腕装備《刺激的な招き》を起動しての後出し℗+1点でアーセナルを破壊される可能性に怯えなければならないということです。これはNuuの強みの一つですね。
5種の超越カード
Nuuが採用できる8種の超越持ちカードの内、相性が良い5種が採用されています。残り3枚を入れると超越の枚数が過剰である点や、防御値が無いカードが多すぎて防御的なプランを取る際に邪魔になるといった理由でこの5枚に絞られているのでしょう。
超越して手に入る《内なる気》は基本的にNuuの能力ではなく頭装備《繰り返す悪夢の仮面》に使用されます。特に続行を付与する《誰もが通った道》はNuuでは非常に強力に使えます。
手札が4枚の状況から《苦悶の束縛》をプレイして打点が12点くらいまで上がるように見せかけて、相手に防御を3-4枚使用させた後に《誰もが通った道》で続行を付与することで無駄な過剰ブロックにして、その後《Command and Conquer》をプレイしてアーセナルまで破壊する…といったプレイが可能です。勿論、GuardianやBrute相手で強力な青いカードが追放されている場合、Nuuの能力に《内なる気》を使用します。
《セイレーンの呼び声》
《セイレーンの呼び声》は青が20枚以上入っており、青1-2枚と赤で攻撃することが理想的なデッキすべてに有効な手札破壊カードです。
これも多くのNuuのリストで3枚採用されています。特に超越カードを入れるNuu、Zen、Enigmaには非常に有効です。AzaleaやRiptide,Faiのような青の採用枚数が抑えられる相手にはサイドアウトされます。使用する対象に制限がないため、武器での攻撃にも使用できるのと、決まれば1枚ドローできる点が非常に強力。
防御リアクション
Xavier氏のリストは防御リアクション4種が3枚ずつ採用されています。他のリストと比較しても非常に防御的な選定です。《Fate Foreseen》と《That All You Got?》の2種はサイドカードであり、追加の防御リアクションが欲しいマッチアップや、《That All You Got?》の効果が狙えるNuuミラーやZen相手に投入するのでしょう。《Hold the Line》はZenやKayoといった2ドローを交えたビッグターンを狙う相手へのメタカードかつ、相手ターンに超越する選択肢も発生する青いカードとしての採用でしょう。
特徴的なカード
《Sigil of Solace》はNuuに一般的に0-1枚採用されるカードで、Xavier氏のリストが3枚取ってるのは珍しい構築です。ですが、この3枚採用により非常にFatigueして勝つことが容易になっており、大きな勝因となっています。Nuuが使うSigilの強みは3つあります。
①Zenなどが得意な2点、1点など小刻みな攻撃を1枚で無力化し、耐えきる可能性が上がる
②Nuuの手札が1枚残っている状況でNuuが攻撃。《ほんの切り傷》などの攻撃リアクションを警戒させて相手に2枚防御に使用させた後に《Sigil of Solace》をプレイできれば、こちらは3点回復で相手は無駄に手札を1枚消費、カード2枚分の差が付く
③同じくNuuの手札が1枚残っている状況で、Nuuが攻撃。相手が頭装備《繰り返す悪夢の仮面》を警戒して余剰な手札をあえて防御に使用しなかった場合、《Sigil of Solace》で3点回復、相手は余剰なカードを上手く使えずカード2枚分の差が付く
上記のように「攻撃リアクションをプレイされる」「超越して《繰り返す悪夢の仮面》により手札を奪われる」の2択のほかに《Sigil of Solace》という3択目が発生します。対戦相手からすると非常に面倒です。
《Eradicate》はおしゃれなピン採用。主に中長期戦が想定されるマッチアップで相手の山札を直接削るカードとして活躍するのでしょう。
《毒の噛みつき》もNuuにはよく採用されるカードですが、ピン採用というのが厄介ですね。《毒の噛みつき》を見ていないから《擦れ音》だけケアしていると+4点されるパターンや、早期に1枚プレイされた結果中盤も2枚目3枚目を考慮して、防御が難しくなったり、非効率になるパターンが発生しそうです。
他青いカードの選定
こまごました青いカードはEnigma対策の役割を持つ《徹底的な細断》以外、ヒット時に相手のデッキの一番上を追放する効果を持った隠密カードで統一されています。
《ただの切り傷》と合わさることで2枚削ることができ、Xavier氏のリストが目指しているFatigueによる勝利に貢献します。《肉体の欲望》はZenやAssassin、Guardianといった攻撃アクションが多いデッキが活躍した日本選手権で高確率でのライフ回復ができたことでしょう。
他にNuuに良く採用される青いカードとしては《Infect》や《Sedate》、《Warmonger’s Diplomacy》、《騒々しい地元民》などがありますが、それらに対して一貫してデッキを削ることとライフを回復することに重きを置いていることが分かります。
本人からの答え合わせ
Some additional things you might want to talk about:
いくつか追加で話したいことがある。
If i use spiders bite, then CnC – its hopeless for my opponent to block – so they will take the damage and lose 1 card. But if i dont have spiders bite, they will be motivated to block with 2 cards – yay, more fatigue!
もし私が《Spider’s Bite》を使って《Command and Conquer》をプレイしたら、相手はブロックすることが絶望的になりブロックしなくなる。結果、カードは1枚しか減らない。
しかし《Spider’s Bite》がなければ、相手は2枚のカードでブロックする気になるだろう。そう、その場合デッキはよりFatigueする!
The selection of Nullrune is important because it allows maximum threat of arm and leg activations
Nullruneの選択は重要だ。腕と脚の起動を最大限に脅かすことができるからだ。
※筆者補足:Xavier氏のリストはArcaneBarrierはOff-hand、頭、胴の3カ所にしており、Nuuの腕装備《刺激的な招き》と足装備《反抗の高踵》を残すリストなので、いつでも攻撃リアクションが狙えてプレッシャーを与える装備品のチョイスになっています
Great analysis!
素晴らしい分析だ!
Fatigueに対する考え方が少し甘かったのと、ArcaneBarrierの部位に対する分析が甘かったようです。次回以降はこの辺りもしっかり意識しながら分析します!
まとめ
・Xavier選手のNuuは妨害しながらライフを守る、Fatigueによる勝利を意識した防御的なリスト!
・Zenが多く、またそれらに対抗するAzaleaやGuardian、Assassinが多い環境であることを読み切った見事な構築!
・長期戦に自信があり、上記の環境で戦っているならXavier選手のリストを参考にするのがオススメです!反面、長期戦をするので対戦相手のヒーローの特性をしっかり把握する必要があり、上級者向け。
記事にご協力いただいたXavier選手に感謝。そして、改めて日本選手権優勝おめでとう!!!
以上です。お読み頂きありがとうございました。
Hiroyuki Tansei/どくいろ @fab_dokuiro
お気に入りヒーロー:《Lexi》,《Fai》,《Kayo》
お気に入りカード:《Art of War》
ホームショップ:TableGameCafe’Shuffle、TCG Shop Go Again
史上初の日本選手権で優勝。CallingTokyoTop8。日本屈指の強豪プレイヤー。手数、打点を読む洞察力が強み。アグロデッキが得意。
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