【National Championship】日本選手権トップ8!Victorを選ぶまでの過程と戦略について

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皆さんこんにちは。おかゆさまです。
今年の日本選手権でトップ8に残ることができました。
今回の記事では自分が行った大会に向けての準備と、実際に行ったトップメタに対する戦略に関する記事になります。

準備

私は「Okayu Pirates」というFlesh and Bloodの調整チームを運営しています。
最初に少しだけこのチームについて話します。
今回の調整チームは今年の日本選手権にフォーカスして、去年の12月末から活動をスタートしました。
期間内にプロツアーロサンゼルス、Road to Nationals、プロクエストの3種の競技大会を経て、日本選手権に挑むことになります。

イベント前に実力を持った相手、かつ調整したいヒーロー相手にCCを回せる機会はとても貴重です。
FaBはCCのプレイ時間が長い関係で、同じマッチアップを連続してこなそうと思うと普段の店舗イベント後に対戦するだけでは十分に経験値が得られず検討も不十分でした。
調整チームでの練習会では事前に対戦相手とヒーローを確定しつつ満足いくまで対戦が可能です。
さらに横に有識者をおいての対戦なども自由に設定できるため、現在の自分のレベルに合わせて対戦方法を選べたりと、かなり有意義な集まりになっていました。

チームについてはまた機会があれば書くとして、ここからは本題の日本選手権に向けた準備について。
新セットの発売後、チームで環境を考察した結果、ゼンが頭一つ抜けているのはすぐにわかりました。
環境はゼン対抗できるか否かでヒーローが環境に存在できるかどうかの物差しになっていて、
この時点でゼンに対して無力なヒーロー・不利なヒーローは使うデッキの選択肢から消えました。

最初の段階で選択肢として用意したのは、ゼン・エニグマ・Azalea・Prismの4種類。
私の中でこれらによるデッキ選択レースが始まりました。

個人的な好みとしてエニグマが使いたかったので、一旦エニグマを中心に選択肢のヒーローすべてを環境に合わせて調整してみることにしました。
しかし1週間程度エニグマを調整した結果、ゼン以外のヒーローに関してはかなり良い感触を示したものの肝心のゼン相手が壊滅的な勝率になってしまいました。

ゼン相手には結界オーラが与える単純なダメージではプレッシャーにならず、しかも忍者クラスの特性上、結界値以下のダメージで割れてしまうことも多いためカードのポテンシャルを生かせないことが多いことが主な要因でした。
これを解決するためには多量の攻撃アクションカードを採用しなければならず、そうするとエニグマであることの優位性が失われるため、エニグマは一旦レースから脱落しました。

次に対等したのはPrismでした。私がプロツアーに持ち込んだデッキであり、デッキの形が変化していないため経験値が残っているのは大きいです。
ゼン相手には高パワーのHeraldによるアグロ戦略と《Figment of Judgement》《Herald of Judgement》による追放ゾーンからのプレイ禁止。
さらに《Arc Light Sentinel》による妨害もあるため、ゼンに対しては有利に立ち回れます。


しかし実際にやってみると、お互いにダメージトレードする展開では天使やHeraldの効果のおかげで勝つこともありましたが、
少しでもゼン側がラッキーだとPrismの初期ライフが低いこともあり、押し切られることもありました。
Prismが使うカードで明確にゼンが防御しないといけないような攻撃がJudgementくらいしかなく、ゼン側にかなりの選択肢を与えることになっていました。
せっかくテンポを握っていてもこちらの手札が芳しくないこともあるため、当初の噂ほど有利ではないのではないかという感覚でした。
しかも後期のゼン側のデッキ調整の影響で《蒼白》が入っていることもあり、高パワーかつ防御が難しくかなりヒット時効果が刺さることも踏まえて、Prismは段々と評価が下がっていきました。

結局、日本選手権の2週間前時点では《Azalea, Ace in the Hole》を第一候補として調整を行っていました。
Azaleaは私がFaBを始めたときに最初に選んだヒーローで、経験値は十分でした。
チームでの練習でもゼンを完封することが多く、相手の超越が遅れた瞬間にかなり勝ちに近づくため、かなり感触はよかったです。
しかし勝率6割を超えているかと言われると、かなり怪しく、ゼン側は《Bonds of Ancenstry》のおかげで墓地にカードを落とすことがメリットなので、序盤は防御すること自体は無駄ではない行動です。
Azalea側がゼンを完封するには《Red in the Ledger》を打ち続けなければならず、そのためには《Codex of Frailty》や《Nock the Deathwhistle》でサポートしながら《Red in the Ledger》を引き続ける必要があります。


さらにこのマッチアップを難しくしているのが、ゼンの防具による防御値が高いことでした。
せっかく《Red in the Ledger》を引いても強化アクションを引かないと防具だけの防御で足りてしまいます。
防具の差は従来の忍者と明確に差別化されるポイントでした。
本来忍者に対して有効だった8の《Red in the Ledger》では胴か腕を残して手札から防御3で受けられてしまい、次のターン大ダメージを受けてしまいます。
しかしそれでも有利ではあったので、ゼンは多いだろうしAzaleaが苦手なヒーローはそこまでいないだろうと思っていました。
1週間前までは・・・。

問題が起きたのは日本選手権1週間前のチーム練習でした。
後に日本チャンプとなるXavierのヌゥと対戦してみると、まぁ勝てない。
Azaleaは矢でしか攻撃できない関係上、格納庫のカードと手札の矢を失うと基本的に何もできないので妨害にかなり弱いデッキです。
しかも負け方がかなり再現性が高いFatigueによる負けでした。結局1回も勝つことはおろか勝ちそうな瞬間もないままボロ雑巾のように負けました。

これを打破しようと思うとかなり上振れる必要があり、あまり現実的ではないと感じました。
日本選手権が世界中で行われている国別選手権期間の最終週にあったことで環境が少し進み、
シーズン開始時にはかなり攻撃的だったヌゥのリストが段々と防御的になった影響でAzaleaがかなり苦手なヒーローに変わっていました。
ヌゥはゼンほどではありませんが確実に使用者が一定数いるヒーローなので、ヌゥに勝てないのは問題があると判断。
Azaleaを使う計画も日本選手権1週間前に暗礁に乗り上げます。

決断

日本選手権まで1週間を切ったところで、元々用意していた中のゼン以外のヒーローが消えました。
この時、私が考えた選択肢は3パターン。

①あきらめてゼンを使う
②Xavierとは当たらないものとしてAzaleaを使う
③ゼンにもヌゥにも微有利のPrismを使う

①はミラーマッチでの勝率が腕の差がかなりあるとしても53%程度だろうと感じたため、やめました。
さらに元々アグロヒーローはあまり好きではないのもありアグロの専門家と当たった時に負けてしまう可能性がかなり高いと感じました。
日本のFaB界隈はこれで2回目の国別選手権ではありますが、まだ出場選手間の腕の差はかなり開いていると感じています。
ミラーで運に依存する試合をするよりも腕の差で勝てるマッチアップを選んだほうが得だと思いました。

②は最終手段です。③が破綻したら②を選択するつもりでした。

③は大会直前の変更でかなりリスキーですが、Prismはもう少し調整する余地があると感じたため最終週ですが調整を始めました。
幸いチーム内にゼンを選択しているプレイヤーが多かったため対戦相手には困りません。
なんとかゼンに勝率60%程度を出せるならKayoやエニグマと当たりさえしなければ問題ないだろうと思っていました。

しかし色々いじりまわした結果、勝率はよくて5割程度と判明。ちゃんとダメでした。
大会2日前の昼にPrism計画が爆発します。もうダメかも。
夜にチームメンバーのどくいろとPrismで最終調整する予定でしたが、Prism計画は破綻してしまったので予定を変更してVictorを使ってみることにしました。

実はVictorは環境最初期に試したヒーローでしたが、どれだけゼン対策をしてもプレッシャーのないターンが発生した瞬間に、ゼンの防具のもたらすリソースからのビッグターンに耐えきれませんでした。
《Pummel》があるターンは強いが、そのうちビッグターンのダメージで負けてしまうといった結論を環境初期に出しました。
しかしいずれゼン側に傾くと思われていたTalisharの統計勝率が高く、ベトナム選手権で友人の「Khoi Dinh」がVictorで優勝したこともあり気になっていました。

どくいろのゼン相手にVictorを試してみたところ想像以上に簡単に勝つことが判明。
デッキの質が向上したこともありますが、試してみた戦略が完全にハマっていて再現性がかなり高い勝ち方ができたこともあり、Victorはゼン相手に勝率6割を超えていると感じました。
Victor自体はプロクエストで使っていたので経験値は足りています。大会2日前ではありますが、この1か月すべての練習をなかったことにしてVictorを使うことに決めました。
直前までデッキを迷えたのは普段から色んなヒーローで遊んでいた上に、競技大会にも多様なヒーローで出ていたことが大きかったです。
この半年多くのヒーローのレベルを上げておいたのが環境分析が好きな自分に合っていたのがかなり良かったポイントでした。

デッキはKhoiのリストをそのまま借りました。すべてが理にかなった採用でこれがその時点でベストであると思いました。

https://fabrary.net/decks/01J1RSST1DH3WE1FWD4MTP8P8K

ゼンに対して用意した戦略

ゼンには主に2つのフェーズが存在します。超越前と超越後です。
超越前は頭装備の価値がただの2点なので、防具で防御することはほとんどありません。
超越後は《Art of War》(以下AoW)さえ手札にあれば、防具をすべて防御に使うことで手札に《臥虎》と《内なる気》が手札に入り、次のターン強力な攻撃をしかけることが可能です。

ゼンを相手にする場合は相手のフェーズに合わせて行動を変化させる必要がありました。
相手が既に超越しているにも関わらず、リソースをすべて使い攻撃するなんてことは死を意味します。
《AoW》が手札か格納庫にあった瞬間にゲームが終わってしまいます。
逆に超越前では武器以外の攻撃アクションカード、《Spinal Crush》や《Chokeslam》などで攻撃できている限り相手の強いターンはやってきません。
できることといえば胴手足の5点防御からの《AoW》くらいですが、Victorならば防具の防御値が高いため耐えることが可能です。

つまりVictor側の課題はゼンの超越後のフェーズをどう無力化するかにありました。
これに対して出した答えが《Pummel》を構え続けることでした。
環境初期のマッチでは《Pummel》を打てるときにはさっさと打ってダメージレースを仕掛けていて、
《Pummel》ある時は強いが、使ったあと弱いと評価をしていました。
そのため当時は黄の《Pummel》や青《Pummel》も増量して対応していました。

《Pummel》はガーディアンであればほとんど採用されているカードなので、ゼン側も撃たれる場面では《Pummel》を想定して防御してきます。
ゼンがとる防御の選択は大体が2枚防御、あるいは防御なしです。
《Chokeslam》や《最も脆い所》は手札に影響がない場合はダメージを受けても問題ないため防御してこないことがあります。
以前はこの防御なしに対して《Pummel》を打っていました。ある程度ダメージも奪えるし手札も1枚捨てさせることができるのでかなり安全です。
しかし次のターン以降困ることが多く、相手の《AoW》や《Ancestral Harmony》を引いたタイミングで防具が出てきて大ダメージを受けてしまっていました。

新しい戦略では《Pummel》をプレイするタイミングを「相手が防具を防御に使ったとき」、「次の《Pummel》を引いたとき」の2つに限定しました。
相手が2枚防御、あるいは防御なしの場合は相手の強いターンがくることがほとんどなく、格納庫込みでも最大20点程度のダメージで済む場合がほとんどです。
Victorは《Test of Strength》に代表される「Clash」カードでリソースを獲得することに長けたヒーローなので、
相手がまったく攻撃しないよりも少しだけ攻撃してくれたほうがアドバンテージを得ることができます。

結局練習段階では、
「超越前にある程度ダメージ交換しておいて、超越後は《Pummel》を構え続ける戦法をとれば、いつかライフが厳しくなって出てくる防具に合わせて《Pummel》をプレイできて、大体大丈夫。」
といった認識で本番に臨みました。

初日のCCではゼンに当たらず、この戦法がバレないまま2日目に突入します。
この戦法を知っているのはこの時点では私とどくいろだけで、情報のアドバンテージがある状態です。

そして2日目のCC1戦目、ついにゼン戦がやってきます。待望の瞬間でした。
やっとゼン相手に戦えるのでウキウキの私。先手後手の選択権も得て、後手を選択します。
しかしこのマッチで想定外のことが発生します。相手が先手1ターン目で超越したのです。
私の持ってきた戦略は簡単に言うと「前半はなんやかんや殴りあって、超越後は《Pummel》でがんばる。」
1ターン目から第2形態になるのは聞いていません。卑怯です。

Need Pummel

私は後手1ターン目から《Pummel》構えフェーズにシフトしないといけなかったのですが、もちろん《Pummel》は手札の中にありません。
半端な攻撃をして相手の手札と噛み合った瞬間にゲームが終わるのはわかっていたので、練習しなかったことをやります。
「超越されたら《Pummel》を引くまで一切攻撃しない。」に戦略を更新しました。

もちろん《Pummel》を引くまで相手の攻撃をすべて受け続けることになりますが、そこはさすがVictor Goldmane。なんとかなりました。
ゼンはヒット時効果のある攻撃アクションはほとんどないので、4の攻撃を防具と合わせて防御しないといけないことがほとんどありません。
したがって効率の悪い防御を強いられることがほとんどなく、ヒット時効果がある《Mauling Qi》や《Tiger Swipe》は《臥虎》が出たときだけ警戒すれば問題ありません。

ゼンのデッキ構造上、青のカードを大量に投入していて、短期決戦には強いが中・長期戦は得意ではないので、ある程度受けてしまえばFatigueも狙えることもわかっていました。
手札のカードをすべて防御に使いつつ、相手にビッグターンを用意させないようにプレッシャーをかけるのは難しかったですが、
練習段階でゼンも回していたので割と上手く処理することができました。
なんとか《Pummel》を引けてからはプラン通りゲームを進め、装備に合わせて《Pummel》をプレイ。
装備がなくなったあとはなんとか押し切りの形で勝利することができました。

続くCC2戦目もゼン相手に、この戦法で無事勝利することができ、トップ8が概ね確定します。
残念ながらSEでは2日前にデッキを決めたことがかなり足を引っ張り、Uzuri相手に負けてしまいました。
これは1週間前程度にデッキを確定していればもう少し練習できて、防げたことではあるので、バランスが難しいところです。

これで私の2024年日本選手権が終わりました。

今回は持って行った戦略が上手く機能して、上々の結果となりました。
2年連続のトップ8なので来年も頑張りたいですね。
次回はプロツアーアムステルダムに参加しますので、そちらでも頑張りたいと思います。

ここまで、ご拝読ありがとうございました。また次回。


おかゆさま @okayusama
お気に入りヒーロー:《Kano》,《Azalea》,《Lexi》
お気に入りカード:《Blazing Aether》
ホームショップ:TCG Shop Go Again
史上初の日本選手権でTOP4。Battle Hardened東京でもTOP4。調整チーム「OkayuPirates」船長

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