何故プロクエストで《Viserai》を使用したのか?環境を読んでのヒーロー選びについて

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Go Again Mediaに記事を寄稿させて頂いております、dokuiro/Tansei Hiroyuki(@dokuiro_mtg)です。
4月は優勝すればゴールドフォイルやプレイマット、プロツアーアムステルダムへの参加権利が獲得できる競技イベント「プロクエストシーズン5」(以下PQ5)が全国で開催されました。競技プレイヤーの一人として参加を楽しみにしていた自分も、3月から参加予約し、「さてどんなヒーローで大会に出よう…」と考えていました。

1.《Viserai》へ至るまで

3月に開催された競技イベントであるRtN(Road to Naitonals)は強力なヒーロー《Kayo》である程度勝ち越すことはできていましたが、3月後半からのPTや直近のCallingを見ていると《Kayo》は明確にトップメタであり、《Kayo》は対策される側に立場を移していると確信。《Kayo》は多くの大会で使用率最多かつTop8常連ではあるものの、「優勝はそこまでしない」ヒーローになりつつありました。理由は最多使用ヒーローである《Kayo》を意識しての《Hold the Line》や《Balance of Justice》を採用しているヒーローの増加、そしてそもそも《Kayo》が有利を取れるヒーローの減少です。

CoPの採用率を超えた新時代の頭装備
ハチェットDorintheaやKassaiを中心に採用率激増

「このまま《Kayo》を使い続けるのは得策ではなさそうだなぁ…どうしても運が絡むミラーマッチを安定して勝つのも大変そうだし…」と考えた自分は次のヒーローを探し始めます。さて、次のヒーローを選ぶにあたり、環境を整理してみましょう。HVY発売以降、top3は概ねこれらの戦力が占めていました。

1.《Kayo》
2.ハチェット型《Dorinthea》&《Kassai》
3.《Victor》

これらHVY三銃士に《Dromai》や《Azalea》が続くような状況。ただし《Dromai》はプロツアーロサンゼルスの優勝によりLivingLegendがほぼ確定していたため、PQのメタに影響するのは初週のみであり、メタ読みから外しました。焦点となるのはやはり大会の半数を占めるであろう、HVY三銃士。それら全員に有利がつく夢のようなヒーローいないか?とFabraryの統計と睨めっこしていると、いました。《Viserai》です。

2024/3月Fabrary統計

しかし、《Viserai》は長らく環境から消えていたTier3ヒーロー。ここ半年のCallingやPTで使用者0-2,3人帯の常連です。本当に信じて良いのか…?

2024年5月5-7日 Callingプーケット、《Viserai》使用者は0/206
2024年3月21-24日、プロツアー ロサンゼルス、《Viserai》使用者は6/388


更に《Viserai》はタートルと呼ばれる防御的に動いてコンボを狙うデッキと、順当にライフレースをするアグロの2パターンの構築があることから、Fabraryの勝率の統計は散りやすく、HBY三銃士に有利を取っているという統計もなかなか信用しづらい…のですが、「《Victor》はClashに負けると《Kayo》に負ける」「Warriorクラスはコントロール《Dash》や《Riptide》、《Teklovossen》などにマッチングしてしまうとほぼ負け確定」等の要素が懸念要素となり、他に有力候補もいなかった為、ここは一度《Viserai》を試してみることにしてみました。

2.《Viserai》研究実践編

ちょうどプロツアーロサンゼルスで結果を出したアグロViseraiのプレイヤーがリスト及びプレイガイドを公開していたため、まずは偉大な先人に倣うことに。そのデッキリストはこちら

そこからさらに調整を経て完成したリストがこちらです。

構造としては《Marverion Skies》→ピッチして1コスト4点のアタックアクション→2コストを使用して武器《Nebura Blade》で攻撃が基本の流れ。3枚のカードで4点のヒット効果持ちを2回繰り返すアグロデッキです。以下のような手札がアグロ型《Viserai》の理想的な手札の一例です。

4枚や5枚使用できると《Mordred Tide》や《Revel in Runeblood》が絡んで1ターンに出せる打点が跳ね上がり、1ターンに20点越えのダメージを出すこともしばしば。手札が多いほど倍率が上がるアグロデッキというのは《Fai》なんかが同じ性質を持っていますね。

実際にTalisharで3月末から練習開始し、PQ開始まで練習し続けてみると、以下のような立ち位置と判明。練習や研究・相談にお付き合い頂いた友人達に改めて感謝。
①《Kayo》、《Prism》に有利 7:3
②《Levia》、《Kassai》、ハチェット型《Dorinthea》に有利 6:4
③《Victor》に五分
④《Katsu》や《Fai》や《Azalea》に不利 3:7
上記以外はおおむね五分~微有利。練習を通してBrute系、Warrior系、《Prism》に安定して勝率を出すことができ、《Azalea》を回避すれば優勝も狙える立ち位置かも…と思い始めました。

3.大会結果

実際3回PQに出場した結果は以下。(デッキリストはこちらからどうぞ)

1回目:《Kayo》×2、ハチェット《Dorinthea》、《Levia》、《Prism》に勝って5-0で予選抜けし、《Victor》に負けて4位で終了

2回目:《Kayo》×2、《Levia》、《Viserai》に勝ち、《Kano》に負けて4-1で予選抜けし、《Kayo》に負けて8位で終了 同リストをシェアした友人が惜しくも2位

3回目:ハチェット《Dorinthea》×3、《Kayo》に勝ち、《Kayo》と《Rhinar》に負けて4-2で11位で終了

自分の実力不足もあり、優勝という結果には結びつきませんでしたが、練習での相性の認識通り、PQを通して、Brute系統には勝率7割、Warrior系統には全勝となり悪くないデッキ選択ではありました。

4.何故《Viserai》はそこそこ勝てたのか?

では、これまでTier3の位置であり、かつ大きな強化も貰っていないアグロ《Viserai》が何故勝つことができたのか、その理由を深堀しましょう。

1.Arcane Damageが環境的に強い
HVYで躍進したヒーロー、《Kayo》、《Victor》、《Kassai》達の共通点は装備品が強力なことです。Arcane Damageを得意とする《Viserai》の長所としてそれらの装備品を《Nullrune》装備に変えることを強要できます。

実質相手のライフを3点分減らしつつ、《Apex Bonebreaker》や《Braveforge Bracers》等の打点強化能力も失う訳なので戦闘前からリードを取ることができます。相手が《Nullrune》等のABを装備してこないならそれはそれで、終盤のリーサルがとても簡単になったり、足装備《Spellbound Creepers》や《Meat and Greet》がとても強く使えるといったメリットがある為、どちらでも美味しい状況になります。

また、BruteクラスやWarriorクラスのデッキはをArcane Barriarに使用してしまうと満足に攻撃ができなくなる色バランスで構築されていることが多く、Arcane Damageの通りが良いです。終盤、Arcane Barriarに使用しないと危ういが、リソースをそこに払ってしまうと満足に反撃できなくなってしまう…という状況まで追い込むことができればほぼ《Viserai》が勝ちます。

また、《Kassai》やハチェット《Dorinthea》は足装備《Valiant Dynamo》の存在によりゲームが長引くほどライフが有利になりやすいですが、Arcane Damageという防ぎづらいダメージにより相手にプレッシャーを与えることで、長期戦に持ち込まれるのを防ぐことができます。

2.ブレイクポイントが強い

トップTierである《Kayo》は構築の性質上《Sink Below》等の0コスト4点のディフェンスリアクションを採用しづらく、4点を防ぐためには「装備品と手札1枚でブロック」か「手札2枚でブロック」のどちらかを選択しなければいけない状況がほとんどです。

《Marverion Skies》を乗せたアタックアクションに手札と装備を要求した後は大体《Nebura Blade》による攻撃は通り、Runechantトークンが残ることにより、実質5点分の価値を出しつつ、Runechantトークンを参照してコストが軽減される《Runic Reckoning》等のカードが次のターンに使いやすくなり、動きやすくなります。《Kayo》は構造上4点ブレイクポイントに弱いという弱点を突いたのがアグロ《Viserai》です。

3.《Viserai》が不利なヒーローにとって良くない環境である
上述した通り、アグロ《Viserai》は《Azalea》、《Fai》、《Katsu》を苦手としています。《Azalea》に関しては《Red in the Ledger》によりアクションを縛られると《Viserai》の強い動きが何もできないというのが不利な理由であり、《Fai》と《Katsu》に関しては「自分よりも早くかつ強力なターンを持つアグロだから不利」というのが理由になります。ですが、《Fai》と《Katsu》は《Victor》及びWarriorクラスとの対戦に不利がつき、Bruteクラスとの対戦も五分~微不利と環境が向かい風であり、環境から減少傾向です。苦手な相手が少ない環境こそ狙い目、ということですね。

まとめ

1.直近の大型大会などから環境を予想しておくのが大事!
2.有利不利を正確に認識してデッキを選択するのが大事!

3.大会の主要を占めるであろうヒーローに不利がつかないデッキを選んだり、リストをアレンジしよう

以上です。

自分はプレイやセンス、デッキビルド力などは平凡なプレイヤーだと思っていますが、メタ読みや各デッキの相性の把握は結構努力してやっており、メタ読みを的中させて結果に結びつけていることが多いです。ヒーローを選ぶ際にも、自分のプレイスタイルとの相性や、ローカルなメタなど、今回記事に書いた以上に色々個人の都合は絡むため、一筋縄にはいかないと思います(自分も性格上使いこなせないヒーローが一定数います…)が、デッキ選びやデッキアレンジの参考になれば幸いです。

ご拝読ありがとうございました。


Hiroyuki Tansei/どくいろ @dokuiro_mtg
お気に入りヒーロー:《Lexi》,《Fai》,《Kayo》
お気に入りカード:《Art of War》
ホームショップ:TableGameCafe’Shuffle、TCG Shop Go Again
史上初の日本選手権で優勝。日本屈指の強豪プレイヤー。手数、打点を読む洞察力が強み。アグロデッキが得意。

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