FaBはプレイヤーに先手後手の決定権があるゲームですが、慣れるまでは「この対戦は先手を取るべきか後手を取るべきか」の判断が結構難しいゲームです。マッチアップや細かいリストに寄って結構変わるので、一概に言い切ることは難しいのですが、今回は先手後手どちらが良いかについての基本的な考え方を書きます。

ざっくり言うと後手の優位性は「相手の攻撃を防ぐことでライフレースに勝ちやすい」で、先手の優位性は「セットアップがしやすい」です。

お気づきの方も多いかもしれませんが、FaBは基本的に後手が有利を取りやすいです。以下、その理由や例外となるパターンを細かく書いていきます。

後手の優位性「ライフレースに勝ちやすい」

例としてFaiミラーの対戦を見てみましょう。結論から言うと、Faiミラーは後手が有利です。
1ターン目の攻防を具体例として書いていきます。

プレイヤーA(左側)が先手で、以下のような手札でスタートしました。カードを1枚アーセナルに置いてターンを終了したいため、手札3枚を使って相手にできるだけ攻撃します。

プレイヤーAは青い《Lava Vein Loyality》をピッチして《Mounting Anger》から4点go againでアタック。プレイヤーBは2点のカード2枚でちょうどブロックします。→続いて《Rasing Resentment》で3点go againでアタック。プレイヤーBは3点でちょうどブロック。→をピッチして出した2が余っているため装備している《Searing EmberBlade》で3点go againでアタック。プレイヤーBは3点でちょうどブロック。 Draconic Chain linkが3ある為、Faiはヒーロー能力で墓地にある《Phoenix Flame》を回収してそのまま1点go againでアタック。プレイヤーBの手札は防御に4枚使い切っているので防御せず、1点のダメージを食らいます。→そしてプレイヤーAは手札に残った《Brand with CinderClaw》をアーセナルに置いてエンド。プレイヤーAとプレイヤーBは手札を4枚引いてプレイヤーBにターンが回ります。プレイヤーBは返しにプレイヤーAと同じアタックをしたとします。

これで状況を整理してみましょう。先手側のプレイヤーAが1ターン目にできたことは「相手に1点のダメージを与える」「アーセナルに3点相当のカードを置く」のみです。対してプレイヤーBは返しの後手1ターン目に11点のダメージを出すことができています。さらに《Mounting Anger》や頭装備《Mask of Momentum》の誘発を嫌ったプレイヤーAは手札や装備をブロックに出してくれる可能性が高いです。

このように、先手1ターン目で攻撃をしても殆ど防がれてしまった場合損をするので、シンプルなダメージを出すことしかできないヒーローは、先手が弱いことが多いです。

先手側はアーセナルにカードを置くことで次のターンの攻撃を後手のプレイヤーより強くすることができる優位がありますが、カード1枚分の得に対して、後手がカード4枚分得していると考えると後手が有利です。おおむね「アグロミラーは後手有利」と言うことができます。大体のリミテッドでも後手が好まれます。

じゃあFaBはダイスロールに勝って後手を選び続けるゲームなのか?というとそうではありません。

続いて、先手で強い例をいくつか挙げましょう。

先手の優位性①「強力なセットアップをする」

先手の弱点は、「先手1ターン目にアタックをしても殆どが防がれてしまうところ」にあります。なので、「先手1ターン目にアタックをせず、次のターン以降強い動きができるよう準備となるアクションをする」ことが一つの回答になります。次のターンの最初のアタックを大幅に強化するKayoの《Cast Bones》や、MechanologistのItemやEVO装備品などそれ以降のターンを強化してくれる動きなどが当て嵌まります。

他、DromaiのDragon展開や、PrismのAura展開、Genericなら《Energy Potion》の設置などで盤面を展開していくことも先手の強いアクションに該当します。

これらのアクションがあるヒーローは「先手で強い動きがあるヒーロー」と言えるでしょう。また、これらのカードがなくても単純に「アーセナルにカードを先に置いて手札5枚のターンを相手より早く作れる」というのも先手の強みの一つです。手札の枚数が多いほど出力が掛け算のように上がっていき、かつ特定のカードを組み合わせたいKatsuやViseraiといったヒーローでは他のヒーローよりも大きな意味を持ちます。

先手の優位性②「ブロックされづらい攻撃をすることでライフをリードする」

もう一つの解決法として「ブロックされづらい攻撃をする」があります。後手は手札を4枚ブロックに使った後、4枚引き直して攻撃側に回れるところに利点があります。ならDominateやOverpowerといったブロック制限を持つ攻撃や、Intimidateで相手の防御用の手札を一時的に追放したり、相手のブロック後に攻撃リアクションによる強化をして意表を付いてダメージを与えることで後手の優位を減らすことができます。

先手の優位性③ 「相手にブロックにカードを出させることでファティーグを加速できる」

後手の優位性は「ブロックにカードを使ってもターン終了時に手札を引き直せるため実質無料」という点ですが、実はブロックに使ったカードは消耗しています。ライフを守れて得していても、カード消費という観点では損している、ということですね。①や②に比べると微々たる強みにはなりますが、ファティーグを戦略とするデッキにとっては見逃せない差になります。コントロールDashなどは先手で各アイテムにSteamカウンターを載せたりItemを設置するバリューがある上に、Itemなどを引き込めていなくても、適当にアタックして相手がブロックにカードを消費し、相手のデッキを消耗させれるならOKという観点で先手が強力なデッキです。

先手の優位性①、②、③のような戦略がとりやすいヒーロー達は先手でも強いアクションができることがあります。以下6ヒーローは個人的に思う先手が強いヒーローです。Blitzでは加えて《Prism》と《Rhinar》も先手が強いヒーローです。これらのヒーローと対戦する際は本来後手の方が強いヒーローでも先手を取ることが選択肢に上がります。

とはいえ、これらのヒーローでも「先手でも強力な動きができないケース」があります。例としてはBravoは青青青といった理想的なリソース配分の手札が来ればdominate8点といったアタックができて強力ですが、赤赤赤みたいな手札が来て「う~ん、胴装備《Tectonic Plating》を起動して武器《Anothos》で6点の攻撃をしてエンドします…」で終わるケースも割とあります。先手のTeklovossenがEVOを引き込めていないケースや先手のRhinarがIntimidateするカードを引けなかったケースとかもそうですね。なので「自分が先手を取る利益」と「相手が先手で強いアクションをしてくる可能性」を天秤にかけて考慮する必要があります。相手が先手が強いヒーローだったとしても、自分のデッキが先手で強いアクションが取れない構成で、不利なマッチだったりすると「相手が弱い手札でスタートしてくれますように!!」と祈って後手を取るのも立派な戦術です。

先手でアタックするメリットとデメリット

先手でアタックするメリットは勿論「相手にダメージを与えることができるかもしれない」という点にあります。例として挙げたFaiの先手のターンも、相手の手札に《Art of War》などの防御値がないカードがあれば3点ほどダメージが伸びており、先手の利益としては十分でした。

「防御値が低かったり、無いカードが一定数入っているであろう相手」との対戦時は、先手でも攻撃をしかけると思いの外ダメージが通るケースがあります。具体的には《Prism,Awakener of Sol》、《Dash I/O》、《Kayo,Armed and Dangerous》、《Levia》辺りのヒーローには複数種類、防御値が無いカードが入っていることが多いです。《Fai》や《Azalea》も防御値が2のカードが多く採用されるため、十分なダメージを与えることができる可能性があります。

しかし、先手で攻撃することは裏目もあります。それは「相手に手札整理をされること」です。自分が後手の時、手札が赤赤赤赤とリソース事故を起こしていて、相手がアタックしてくれたおかげでブロックにカードを消費し、引き直すことができて赤赤青青といった理想的な手札になる…みたいなことはよくあります。俗にいう「マリガン(=初手の引き直し)をさせてるだけ」という現象です。「攻撃をしても防ぎきられて満足にダメージを与えることができずマリガンさせるだけにならないか」「この相手なら攻撃が通る可能性があるんじゃないか」といったことを計算しながらアタックを仕掛けるべきか否か判断する必要があります。

先手後手にまつわる小テクなど

他、先手後手にまつわる豆知識や小テクを何個か列挙しておきます。

■ vs Levia、Kassai、Katsu
墓地をリソースとするギミックを持つヒーロー相手に先手で攻撃をしかけると、ブロックすることで墓地にカードを増やされてしまい「無料で墓地にカードを送れてうれしい!」という事態になっている可能性があるので、考慮する必要があります。

■ vs Prism
自分が先手の際は、気軽にAP(アクションポイント)を使い切ってしまうとインスタント・オーラを展開される可能性があるので注意が必要。例として《Anothos》6点で攻撃してPrismがカード1枚でブロックして3点。3点のダメージを食らった後、《Arc Light Sentinel》や《Merciful Retribution》を出してきて先手のはずなのに相手に展開を許してしまうことがあります。そういった際はAPを使い切らずにエンドして、相手がインスタントオーラを出したらそのオーラを対象に攻撃をして破壊できるようにしましょう。(APがまだある状態でターン終了時に相手がなんらかのアクションを行った場合、優先権はもう一度ターンプレイヤーに戻ります。)

■ vs Lexi
自分が先手の際は、相手が《Voltaire,Strike Twice》を使うことで、後手番にも関わらずアーセナルにArrowカードを置いてくる可能性を踏まえてプレイしましょう。Prism戦と同じですね。気軽に《Teklo Core》を置いてエンド!といった感じでAPを使い切ってしまうと「じゃあ《Voltaire》を起動してアーセナルにArrowを置きます」と動かれて返しに潤沢な手札とアーセナルで反撃される可能性があります。これを逆手に取って「何もせずにターンエンドします」と宣言、Lexi側が手札を1枚ピッチして《Voltaire》起動、アーセナルにArrowを置いて手札が2枚減ったのを見てから攻撃をしかける、といったテクニックもあります。

■ vs Kano
こちらが先手の際は、Kanoのヒーロー能力でいつでも「青いカードをデッキトップ追放に変換」することができるので、気軽にAPを使い切れません。Kanoに採用されている赤いアクションはおおむね2コストで4~5点のものが多いので、Kano起動用の1枚と、プレイ時に払うコスト用の1枚で手札2枚から5~6点(武器Crucible of Aetherweaveによる強化込み)のArcane damageが飛んでくるというイメージをしておきましょう。相手の手札を全てブロックに差し出させるような攻撃をしかけておくか、Arcane Barriar用のリソースを残しながらターンエンドできるようにプレイするのがオススメです。

■ vs Dorinthea(Dawnblade)、Uzuri
攻撃リアクションが多いヒーロー相手で、相手が先手の場合「攻撃リアクションをプレイされる前提」で過剰に防御札を出すプレイが有効なことが多いです。例としては先手のUzuriが6点のアタックをしてきた場合、《Shred》をケアして9点となるようブロックするプレイをすると安心です。Dawnbladeを装備しているDorinthea相手は6点くらいは上回ってブロックしておく方が安心です。

■ vs Dromai
アタックをしかけて《Sink Below》などの赤い防御リアクションをプレイされると胴装備《Flamescale Furnace》の起動条件を満たしてしまいます。これにより手札を1枚ピッチされると、Ashトークンを生成されてしまい、「先手でアタックした結果、相手がAshトークン分得する」といった事態になってしまう可能性がある為、注意しましょう。

まとめ

・アグロミラーは基本後手有利

・ItemやAuraなど盤面展開できるヒーローは先手でも十分強い行動ができることが多い

・先手でアタック以外やることが無い手札の時は、相手のデッキ構成なども理解してアタックするべきか、しないべきかの判断が求められる

また、このマッチアップは先手後手どっちが有利なんだろう?というデータを知りたければ「Fabrary」の統計タブから先手後手別の戦績を確認できますので、オススメです。(Fabraryについて書いた記事はこちら)以下の画像のような例だと、Dromai vs BravoはDromaiの勝率が52%で、先手だと55%、後手だと49%なのでDromaiが先手を取りたいマッチ!と分かります。

また、対戦相手との対戦後、感想戦で先手後手の感覚を確認しておくのも非常におススメです。Fabraryの統計も参考になりますが、様々なアーキタイプの戦績が集約されているため100%信用するわけにはいかないのが実情です。例としてDashはアグロなのかコントロールなのかで先手と後手どちらが取りたいかは大きく変わりますが、統計として合算されてしまいます。生のプレイヤーが掴んでいる感覚に勝るものはないので、確信が持てていなければ、対戦が終わった後「この対戦って先手後手どっちが有利ですかね?」みたいな話を振って確認しちゃいましょう!

以上です。ご拝読ありがとうございました。


どくいろ @dokuiro_mtg
お気に入りヒーロー:《Lexi》,《Fai》
お気に入りカード:《Art of War》
ホームショップ:TableGameCafe’Shuffle、TCG Shop Go Again
史上初の日本選手権で優勝。日本屈指の強豪プレイヤー。手数、打点を読む洞察力が強み。アグロデッキが得意。

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